マーケティングを成功させるためには、戦略戦術の立案はさることながら、マーケティングそのものを「前へ推し進める技術」も重要になります。戦略は現場で実行されることで意味を成し、前に勧め続けることでで成果へと繋がっていきます。企業単位で行うマーケティング施策は、戦略立案、実行、管理、改善など各プロセスで多くの人が関わります。施策によっては営業や人事などあらゆる部署間での連携が必要です。そうした状況の中でマーケティングを上手く前進めるためには、気合や根性ではなく「阻害する要因(=マーケティング施策が前に進まない複数の原因)」に目を向けることが大切です。本記事では「マーケティング活動が進まない時に考えたい、5つの質問」について解説します。この記事を読んで少しでもマーケティング運営の役に立てたら幸いです。「目的から戦略、戦術へと落とし込まれていますか?」前提として目的から逆算して戦略まで落とし込まれていないとマーケティング施策はうまく進みません。よく見られるのは、施策(戦術)は決まっているが目的が定まっていないパターンです。目的がはっきりしないままマーケティング施策を実行すると、施策に一貫性がなくなり、どれだけ量をこなしても目的を達成しない、といったことが起こります。たとえば「ブログを月に10記事制作して発信する」という戦略だけが決まっていても、何を達成したいのかという目的を明確にしないと、テーマがバラけた情報、ターゲットとなる読者がバラバラ、とりあえず書いたような手を抜いた記事など、施策の「質」にバラつきが生じてしまいます。達成したい目的に優先順位をつける達成したい目的に優先順位をつけましょう。リソースは有限ですので、すべての目的達成を同時に行うことは不可能です。「まずはこの目的から」「業務の7割は目的〇〇へ。残り3割は目的△△へ。」といった形で、優先順位をつけて進めるようにしましょう。以下は3つの目的があった場合の例えです。限られたリソースの中で、最もパフォーマンスが良くなるよう、優先順位をつけて、実施有無を決めるのがおすすめです。優先順位目的戦略戦術(施策)実施有無第1位お客様と信頼関係を構築したい。(のちに顧客となってもらいたい)お客様の改善インタビュー、お役立ち情報、業界の最新情報の解説コラムといった、信頼関係構築につながるコンテンツを、メルマガ読者に届ける。毎日10分、翌日配信のメルマガのコンテンツを決める会議を実施。担当者5名が平日持ち回りでメルマガを作成し、上長チェック。翌日の朝9:00に配信予約。有第2位弊社商品を知らない人に、商品を知ってもらいたい。(のちに顧客となってもらいたい)自社商品と最も相性の良さそうなInstagramを使う。1日3時間のリソースを使って運用し、リーチを最大化する。1日3時間のリソースの中で、フィード投稿×2、ストーリーズ投稿×5、リール動画×1をまず投稿する。投稿数を増やせそうだったり、リーチが増えそうな手法があれば適宜、投稿内容を変更する。有第3位検索流入が減ってきているので改善したい。過去記事をリライトして、最新情報に更新する。コンテンツ編集チームが1人30記事を目標に半年かけて再度リサーチ、情報追加、校閲、更新まで行う。無「追いかける指標は1つ、多くとも2つになっていますか?」マーケティングを進める際に、KPI(重要業績評価指標)やKGI(重要業績目標)などの定量的な目標を設定することがあります。それらが1つ...多くても2つなら管理できるでしょう。しかし、追いかける指標を3つ...4つ...と増やしていくと、どうしても管理が難しくなり、適切なPDCA運用ができません。たとえば、ブログを更新し、オーガニック検索経由でHPに来訪するユーザーを増やし、最終的にはお問い合わせに繋げることを考えたとします。この場合のKGIは「お問い合わせ数」、KPIは「オーガニック検索経由でホームページに来訪したユーザー数」と設定することができます。しかし同時に、離脱率、SNS経由のユーザー数、ブログ下部のCTAのクリック数など、多くの指標を追いかけ始めてしまうと、以下のような方向転換が生じます。「SNS経由のユーザーが増えてきたから、拡散されそうなブログを書こう」「直帰率が高くなってるから、記事中に他記事へのリンクをたくさん貼ろう」「CTAがクリックされないから、記事中の何箇所にもCTAを置いてみよう」成果が現れる前に過剰な方向転換をしてしまったり、限られたリソースの中で追いかける指標を増やしすぎてしまうと、中途半端な施策しか行えず、振り返りも不十分になってしまいます。追いかける指標をできる限り減らし、適切にPDCAを回すことが、マーケティング活動を止めないための、ポイントのひとつになります。追いかける指標には必ず「リミット」が必要追いかける指標には必ず「リミット」をつけましょう。ただし「リミット」は、時間とは限りません。予算、回数、データ量などの可能性もあります。マーケティング施策において、リミットを設けることは非常に重要です。今月中に達成すれば良いのか、今年中に達成すれば良いのか、によって必要な戦略や戦術は全く異なります。目的と期限は必ずセットで考えるようにしましょう。また、期限があることで「その期限までは、他の指標は気にしない」と決めることにもつながります。そして、「リミット」があることで、無意識的に「待つ」ことができるようにもなります。たとえば「ランディングページに広告経由(特定のキーワードと広告文を指定)で1,000ユーザーを誘導し、コンバージョン率を計測する」という目的があったとします。いざ広告管理画面を見るとクリック率、クリック単価、コンバージョン単価などの、さまざまな指標が目についてしまいます。しかしここで広告文やキーワードに変更を加えてしまうと、当然正しいデータは集まりません。PDCA運用をしたいのに、Checkを待たずにActionをしてしまうパターンですね。「今はPDCA運用の中のどこなのか?」を常に考えることも、マーケティングを行う際には非常に重要です。「新たな施策が、”こそっと”増えていませんか?」マーケティングを進める中で、別の新しい課題が発生すると、そちらの解決を取り組んでしまい(リソースを割いてしまい)、マーケティングが進まなくなることがあります。事業が進む中で私たちはさまざまな課題と遭遇します。しかし、新しい課題が現れるたびに分別なく対応してしまうと、マーケティング(それ以外もですが)は上手く進みません。課題を見直すことや再設定することはとても重要ですが、新たな課題解決に取り組む際は、「今、解決すべき?」「一緒に解決すべきか?」など慎重に吟味しましょう。もちろんマーケティングを進める中で、さまざまな課題を同時並行で解決しなければいけない場面もあります。そして無理をしなければ事業が成り立たないことも、スタートアップやベンチャーであれば成長しないこともあるでしょう。しかし無理は続きません。一時的な無理は時には必要ですが、それが続くと中途半端なマーケティング活動となってしまうため、そうならないためにも「今、何をやるべきか?」を考えるようにしましょう。起こりそうな課題を事前に予測しておく事前に、今後起こりそうな課題を予測し対策を考えておくことは非常に大切です。事前に予測ができればある程度対策の目処を立てることができます。「起こりそうな課題」はシミュレーションでも予測できますし、経験者に事前に相談しておくことでも、施策の壁打ちの中でも発見することができます。このように準備し対策を怠らないようにしたいですね。予防できるものは先に防いでしまうのがスマートでしょう。「高すぎる目標設定になっていませんか?」施策を実行する際に、目標を設定することは非常に重要です。しかし目標が高すぎると、達成までの道のりが遠くなりすぎてしまったり、データの収集に時間がかかってしまったり、運任せの一発勝負の施策を実行してしまうなど、マーケティング活動が適切に行えない可能性があります。目標設定にも、リソース、アセット(資産)、タイミング、実績などを含めて設定するようにしましょう。目標設定には、「SMARTの法則(※)」のフレームワークがよく使われます。こういったフレームワークを使って、具体的で達成見込みのある目標設定をしましょう。※SMARTの法則とは?以下の要素を明確にして具体的な目標設定に導くフレームワークです。Specific(具体的な)Measurable(測定可能な)Assignable(誰がやるのか割り当て可能な)Realistic(現実的な)Time-related(期限が明確な)施策にかかる工数を見積もった上で目標を立てる目標設定をする際に、施策を行うにあたってどのくらいの工数がかかるのか具体的にしておくとで、必要な時間も明らかになっていきます。たとえば「ブログを更新して集客する」という施策には以下のような工程が必要です。ブログのネタを考えるキーワード、競合のリサーチをするブログの構成を作成する内容を考えながら執筆する画像や図解を作成&挿入する本文をチェックして修正する公開してSNSやメルマガで拡散ざっくり切り取ってもこれだけの工程が必要です。慣れていない人や本業ではない人がブログを書く場合、1記事仕上げるだけでも相当な時間がかかってしまいます。目標を立てる際に、見積もりをしないまま「ホームページへのユーザー数をブログで3ヶ月以内に5倍増やす」といった目標を設定すると、「やってみたら時間がかかりすぎた」「3ヶ月では到底無理だ」となってしまいます。根性論にならぬよう「必要な時間」と「必要なリソース」をテーブルの上に並べて、現実的な分配を考えることが大切になります。「気合と根性で乗り切ろうとしていませんか?」時には、気合と根性で困難を乗り越えることは重要なマインドです。私は、それがやり切るために不可欠な精神であり大切にすべきだと考えています。しかし、組織運営やマーケティング運営においては「気合と根性」を計算にいれるべきではありません。計測できるものでもないですし、コントロールが難しく、過度に求めると逆効果になる可能性があるためです。詰めの局面で「最後は気合と根性で乗り切ろう」という言葉が、チーム全体を鼓舞する効果があります。ただし、計画段階で高い目標に対して「気合と根性があれば達成できるかもしれない」というアプローチは、中長期的に安定したマーケティング運営をする上では避けるべきでしょう。さいごにマーケティング施策を成功させるには、テクニックや技術、知識や市場性などあらゆる変数が関与します。それと同じくらい大切なのが”マーケティングを運営する組織づくり”だと思います。マーケティングは短期で終わるものではなく、経営と同じく中長期的に成果を出し続けなければなりません。そのためにはマーケティングを運営する組織という土台をしっかり築き上げて、継続的な成果を出せる仕組みを構築する必要があります。すべて自社内で行う必要はなく、外部のパートナーも巻き込んだ形での仕組みづくりも良いでしょう。かくゆう弊社も外部のパートナーを巻き込み、1つのマーケティングチームとして安定的にマーケティング施策を実行できる体制づくりをしています。マーケティングがなかなか進まなくて悩んでいる方も、ぜひ視野を広げて中長期を見据えた仕組みづくりを考えてみてはいかがでしょうか。関連記事:クライアントと長期的に良好な関係を築くために、アルテナにある7つの文化。