インターネットで気軽に商品を購入できるようになり、年齢関係なく多くの人がネット通販を利用するようになりました。そこで日本でも多くの企業で取り入れられているビジネスモデルが「D2C」です。このビジネスモデルは、ネット通販の中でもメーカーが直接消費者に商品を販売する方法として知られています。本記事では、D2Cの基本的なモデルや特徴、D2Cを始める手順など、実際のノウハウも盛り込みながら、改めてD2Cの基礎を解説させていただきます。D2Cとは?D2Cとは「Direct to Consumer」の略称で、「自社で企画・製造した商品を消費者に直接販売する」という意味です。似たような言葉に「B2B」や「B2C」がありますが、B2Bは「Business to Business」という言葉の略で企業同士の取り引きを指し、B2Cは「Business to Consumer」という言葉の略で企業と消費者が取り引きをすることを指します。楽天市場やAmazonなどの大手ECモールは、消費者と取り引きをするB2Cとなりますが、大手ECモールを利用して販売する場合は、直接消費者に販売しているわけではないのでD2Cにはあたりません。また、D2Cと通販も似ているようで異なります。他社で開発・製造した商品をECサイトなどで販売している場合は通販です。D2Cの成功事例をご紹介D2Cのビジネスモデルをイメージしやすいよう、実際にD2Cモデルで成功している企業をいくつかご紹介します。広く知られている企業も多いかと思いますが簡単にご紹介します。ベースフード株式会社完全栄養のパン「BASE BREAD(ベースブレッド )」を展開するベースフード株式会社。自社のECサイトにて完全栄養食品を直接販売しており、D2Cモデルで成功している有名な企業です。画像引用元:ベースフード株式会社 - 公式ホームページ株式会社FABRIC TOKYOオーダーメイドのビジネスウェアを提供するFABRIC TOKYO(ファブリックトーキョー)はD2Cを代表するブランドです。店舗でサイズを測定し、スマートフォンからスーツを注文するビジネスモデルで、自らがメーカーでありながら直接顧客へ販売します。画像引用元:株式会社FABRIC TOKYO Netflix(ネットフリックス)動画配信サービスNetflix(ネットフリックス)も実はD2Cモデルに該当します。動画のような無形商材かつサブスクリプションモデルで収益を上げていますが、ネットフリックス自身もオリジナルコンテンツを直接顧客に販売しており、D2Cと言えるでしょう。画像引用元:NetflixD2Cの特徴ここからはD2Cの特徴について解説します。顧客と直接接点を持つため詳細な顧客データが取得できるコストの削減ができる自社のビジョンや思想を伝えて、コアなファンの育成ができる売り方の自由度が高い商品改良の精度、スピードがあげられる顧客と直接接点を持つため詳細な顧客データが取得できる販売業者を介する場合に比べて、より多くの顧客データ取得できるというのはD2Cの大きな特徴です。購入情報はもちろん、自社サイトにアクセスした情報や購買に至るまでの情報などファーストパーティデータ(※)が収集できるのはメリットのひとつと言えます。(※)ファーストパーティデータ...第三者を経由せず、企業が自社で収集したデータを指します。ファーストパーティデータがあれば、商品の開発やサービスの改善だけでなく、マーケティング施策の幅が広がるので、データ量が多ければそれだけで優位になります。コストの削減ができるオンラインショッピングモール(大手ECサイトなど)へ出展する場合には必ず手数料が発生します。また店舗に商品を卸す場合には、店舗が意思決定できる卸売り価格の調整が必須です。D2Cであればこれら手数料の支払いや卸売価格の再設定の必要はないため、収益性が高く保つことができます。自社のビジョンや思想を伝えて、ファンづくりができるD2Cは「顧客との価値の共創」が大切です。そのためには、ブランドが何を目指しているのか?自社のビジョンや思想をしっかり伝えていくことが重要です。D2Cの場合、メーカーでもありつつ直接顧客に販売するので自社のSNSアカウント、同梱物、フォローメール等、さまざまなシーンでメッセージを自由に発信することができます。売り方の自由度が高いD2Cでは売り方や顧客へのフォローアップの自由度が高いところも特徴です。キャンペーンや価格改定といった施策も、自社の決定でスピーディーに実施可能です。代理店や卸売業者が介在している場合は、各社の合意形成に時間がかかったり、自社の思ったとおりのことができない場合があります。その点、D2Cは各社の事情に左右することなく好きなタイミングで、自由に施策を行えます。商品改良の精度、スピードがあげられる多くの顧客データを取得できるD2Cだからこそ、ユーザーのリアルな声を集めて、スピーディーに商品改良に繋げることができます。ベースフード株式会社は「Base Food Labo」というオウンドメディアを持っており、ユーザーからの改善提案を集めて商品に反映させます。画像引用元:Base Food Labo - ベースフード株式会社このように直接ユーザーの声を集めて、スピード感のある商品改善ができるのはD2Cのメリット言えます。D2Cを始める前に考慮すべき点ここからD2Cを始める前に考慮すべき点について解説します。以下を踏まえた上で取り掛かることをオススメします。ビジネスが軌道にのるまでに時間が必要集客、リピート施策まで自社で行う必要がある商品やマーケティングの独自性が必要ビジネスが軌道にのるまでに時間が必要D2Cを1から始める場合は、軌道に乗るまでに時間がかかる傾向にあります。自社商品を開発する工程や、商品を認知させていくマーケティング施策にも一定の労力と時間を要します。初期のフェーズでは商品やマーケティング施策の改善材料となる顧客データも乏しく、いまの戦略が正しいのかどうかの判断が難しいです。またD2Cのビジネスモデルは参入ハードルがそこまで高くないため、大手や小売店の新規参入は多く存在します。そのため独自性を持った商品でも、顧客に見つけてもらい、手に取ってもらい、リピーターになってもらうまでに時間がかかるという前提は持っておいた方が良いでしょう。集客、リピート施策まで自社で行う必要がある大手ECモールはそのモール自体が集客力をもっているため、出店するだけでもある程度の集客が可能です。また小売店で商品を販売する場合は、小売店が集客をしてくれるため集客に割く労力は低くなります。D2Cの場合は、販売サイトの制作か、顧客の集客、またリピート施策まで一連の工程すべてを自社で行う必要があります。商品やブランドを知ってもらうこと、購入してもらうための施策、リピートをしてもらうための施策など、マーケティング活動の多くを自社で行うための費用を計算に入れる必要があります。商品やマーケティングの独自性が必要D2Cビジネスの場合は、自社で魅力的な商品を開発し、自社プラットフォームにユーザーを集めなければいけません。すでに類似の商品が世に出回っていたり、集客力の高い大手ECモールに安価で同等の商品がある場合、その中で勝ち抜くのは至難です。そのため、商品開発の時点で他社と差別化できるような要素を加えたり、マーケティングの戦略で差をつける必要があります。D2Cを始めるためのステップここからD2Cを始める手順をステップに分けてそれぞれ解説します。STEP1:D2C事業を立ち上げる目的を言語化するSTEP2:取り組むジャンルに適用される法律を確認するSTEP3:市場を調査し、簡易の売上プランを作成するSTEP4:商品コンセプトを作り、ペルソナの生の声を調査するSTEP5:OEMメーカーの選定STEP6:商品価格を仮決めするSTEP7:業務体制・物流体制を整えるSTEP8:集客手法を考えるSTEP9:CRM施策を考えるSTEP1:D2C事業を行う目的を言語化するまず「なぜこの事業を立ち上げるのか?」「どんなユーザーの問題を解解決できるのか?」「どんな世界観を届けたいのか?」この3つを明確にすることから始めます。この価値観は商品開発からマーケティング、顧客との関係性作りすべてに影響するので、はじめに言語化しておくことが大切です。STEP2:商品のジャンルに適用される法律を確認する商品のジャンルによっては、販売に許可や資格が必要なものがあります。また商品ジャンルごとに法律が定められており、D2C事業を行う上で遵守する必要があります。たとえば、健康食品であれば「薬機法」、機能性表示食品であれば「健康増進法」といったジャンル特有の法律があり、「景品表示法」はD2C販売を行う場合、すべての商品に関わる法律です。法律ごとにマーケティング施策で訴求できる内容も異なるため、あらかじめ把握しておきましょう。STEP3:市場を調査し、簡易の売上プランを作成する「この問題を抱えるユーザーは十分な人数がいるか?」「競合の参入状況はどうか?」といった市場の状況の把握も重要です。販売価格や目標の売上にもよりますが、素晴らしいコンセプトが出来たものの買う人数が少ない場合、ビジネスは成り立ちにくいでしょう。一方で想定する顧客の数が十分な場合でも、競合や新規参入企業が市場では、差別化をするための準備が必要になります。関連記事:【マーケティング活動のお供に】私たちがよくお世話になっている「オススメ市場調査サイト18選」STEP4:商品のコンセプトを考えるD2Cでは、商品のコンセプトが重要になります。商品自体の性能も重要ですが、商品が誕生したストーリー、ブランドに込めた想い、企業の思想など、顧客が共感してファンになってくれるような土台作りが大切です。たとえば、ベースフードは「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」をミッションに掲げ、パンやパスタなどの主食を栄養バランス考慮した商品として販売してます。参考:開発ストーリー - BASE FOODSTEP5:商品を製造する環境を整える自社で商品を製造できる環境がない場合は、商品の製造元を見つける必要があります。製造場所が確保できない場合は、OEMで製造すると良いでしょう。OEMとは、「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」を略した言葉で、他社で自社製品を製造することを指します。商品の企画や設計は自社で行い、製造の部分を製造可能な他社に依頼する方法です。OEMメーカーによって、最低ロット数が決まっていたり、設計から加わってくれる会社もあるので、自社に合った製造元を調査してから依頼しましょう。STEP6:商品価格を仮決めするOEMメーカーからの見積もりが進むと具体的な原価および商品の粗利がわかるようになります。商品の価格を仮ぎめした上で、改めて市場や顧客ニーズと向き合います。そうすると「相場と比較して高いのか?」「価格に対してどのくらい価値があるか」「リピート購入は見込めそうか」など現実的な予測をこの時点で立てておくと、戦略が練りやすくなります。STEP7:業務体制・物流体制を整える商品が完成しても、顧客に届くまでのフローを整えなければ良いサービスを提供できません。入荷→検品→在庫管理→ピッキング→梱包→出荷といったように、顧客の手元に届く間にもさまざまな工程があります。これらを整える前に集客をしてしまうと、在庫切れ、出荷ミス、賞味期限切れ、などあらゆる問題に発展する可能性があるので、作業を委託するか自社で完結できる体制をあらかじめ整えておきましょう。STEP8:集客手法を考えるD2Cに限った話ではありませんが、販売開始した後から集客を開始するのではなく、販売開始前に見込み顧客を確保しておくこともビジネスを軌道にのせる上で大切です。たとえば、以下の方法で認知を広げておくことができます。クラウドファウンディングで開発ストーリーを見せるSNSで開発工程やストーリーを発信するLPを制作してWeb広告で認知を集めるブログや動画などを発信しプラットフォームからの検索流入を確保するこの他にもドライテストといって「◯◯という商品があれば買いますか?」といった具合にアンケートなどをとっておくと販売前の準備に役に立つでしょう。STEP9:顧客との関係性づくり新規集客と同時に考えておくべき重要な点は「顧客との関係性づくり」です。新規顧客獲得に投資を続けてもいずれ頭打ちがきます。新規顧客の獲得と一度接点を持った顧客との関係性づくりは同時に行うことが重要です。商品の同梱物(商品と一緒に顧客に送付する印刷物や品物のこと)メルマガ・LINEにてメッセージ購入後の顧客にフォローメッセージリピートを促すような施策や、購入に至らなかった顧客に対してアプローチをして、売上を伸ばします。まずは接点を持った顧客の状態を管理できるように環境を整えましょう。関連記事:顧客管理とは?顧客管理の概要とCRMツールについてまるっと解説D2C事業によくあるマーケティングの失敗D2Cを始めたものの「集客が上手くいかない」ということはよくあります。ここからはD2Cにおけるマーケティングの代表的な失敗例をご紹介します。届いた商品が顧客の期待値を下回ってしまう広告やLPを見て魅力を感じて、購入してくれたものの「思ったよりも...。」と期待値を下回ってしまうケースがあります。主に2つの原因が考えられます。広告やLPで誇張しすぎた表現をしていたり、商品画像の加工が強くなりすぎて現物とかけ離れてしまうパターンコストを削減するがあまり、梱包やパッケージが世界観を崩してしまうたとえば、広告やLPで高級感のある世界観を表現された商品が、無地の箱、無地のビニール袋で包まれて届いた場合、その時点でイメージが崩れて再購入の可能性は下がります。他にも、商品画像ではボトルに入っているのに、実際にはパウチタイプの容器に入っていたら、期待を裏切ることになりかねません。広告で魅力を伝えることは重要ですが、顧客の期待を裏切らない工夫も同時に注力する必要があります。集客したユーザーが、ターゲット年齢とずれていた集客施策に力を注いでも、ターゲットとしている顧客と施策がズレている場合があります。たとえば、ターゲットとしている年齢層が30代~40代にも関わらず、若年層が多くいるTikTokで発信していたり、若年層に注目されているインフルエンサーを起用すれば、ターゲットとしている顧客と接点を持つことが難しくなります。事前調査の段階で、ターゲットとしている顧客がどの媒体を利用していて、どんな課題をもっているかなど綿密に行わなれければこのようなミスが発生します。ブランドの世界観が醸造できないD2Cにおいて、ブランドの価値観やイメージづくりは非常に重要です。しかしながら、いざ事業を開始すると思ったように集客ができず「ブランドや世界観がニーズと合っていないのか?」と疑いをかけてしまいます。そうすると短期的にメッセージや世界観を変えてしまい、結局いつまで経っても独自の世界観が醸成されません。そして、それらを変えたからといって急激に売上が変化するわけではないので、良し悪しの判断が付かず何度も変えてしまうということを注意しなければなりません。ブランドの価値観やメッセージなど、事業の軸となるものは事前に時間をかけて作りましょう。そして変わることのないものとして社内外にしっかり発信し続けることが大切です。さいごにD2Cは、収益性が高く、自由に商品を販売していくことができるビジネスモデルです。また、上手く軌道に乗せることができれば、根強いファンができ売上も安定するでしょう。一方で、商品開発や集客、ファンづくりなど注力すべき点が複数あるため、簡単ではありません。「D2Cを軌道に載せたい」「集客を成功させたい」という課題に対して、弊社にてマーケティングによるご支援ができまので、気軽にご相談いただければと思います。本記事がD2Cに取り組む方々の参考になれば幸いです。