誰もが一度は学校の授業で「こそあど言葉」を学んだはずですが、大人になった現在、明確に違いを説明できるという人は少ないのではないでしょうか? 正しく意味を伝えるためには、日常でもよく使う「こそあど言葉」の違いを理解し使い分ける必要があります。当記事ではこそあど言葉の定義のおさらいから間違えやすい用法、また日常的な文章やWebライティングにこそあど言葉を用いる際のポイントを解説します。文章を書く機会が多い方や、日本語力をアップさせたいという方はぜひ参考にしてください。「こそあど言葉」とはこそあど言葉はどのような用法で使うかや、話し手と聞き手の距離によっても使用する言葉は変わります。まずはどのように使い分けるかについて解説していきます。物事を指すときに使用する指示語こそあど言葉とは、次の4つの品詞をまとめた総称であり、「指示語」と呼ばれることもあります。指示代名詞(これ・それ・あれ・どれ)特定の場所・方角・事物などをさします。形容動詞(こんな・そんな・あんな・どんな)場所・人・物事などをさし、名詞を説明するために使われます。副詞(こう・そう・ああ・どう)同じ文の中に使われている、他の言葉の意味を説明するために使われます。連体詞(この・その・あの・どの)他の言葉を詳しく説明するために使われます。「こ・そ・あ・ど」の違いは話者・聞き手と物事の距離上記で説明した指示語は、話し手・聞き手と物事との距離によって使い分けられます。次の表は、具体的な使い分けを表したものです。 距離の見分け方は、表に記載されている品詞の分類によって区別できます。近称:話し手から近くにあるものや場所をさす品詞。中称:聞き手(会話をしている相手)から近くにあるものや場所をさす品詞。遠称:話し手からも聞き手からも遠くにあるものや場所をさす品詞。不定称:話し手・聞き手からの遠近がわからないものや場所をさす品詞。指示語がさしているものや場所は、話の内容や前後の文脈などから判断します。指示代名詞としての「こそあど言葉」の使い方次に指示代名詞としてのこそあど言葉の使い方について解説します。事物を指す指示語自分自身を起点として、近いモノや遠いモノを指す時に使います。使い方の一例は次の通りです。「あの」コンビニで待っています。「これ」が私の好物です。「その」皿を取ってください。方角を指す指示語自分自身を起点とした方角を指す時に使います。使い方の一例は次の通りです。「こちら」に歩くとコンビニがあります。駅は「どちら」の方向にありますか?すぐ「そちら」に向かいます。様子を指す指示語物事の様子や動作などをさすときに使います。使い方の一例は次の通りです。「こう」すれば上手にできます。「そんな」ことでよいのでしょうか?「あんな」風に言われたくありません。指示語の種類を間違えてしまうと、文章の意味が相手に伝わらなくなる恐れがあります。誤解を招かないように、適切な指示語を使うよう心がけましょう。誤解が許されない文章であれば、指示語の使用をできるだけ避けるのも1つの手です。「こそあど言葉」を使いこなす際の注意こそあど言葉を正しく使いこなせられるように、事例を用いながら以下4つの注意点について解説します。「こそあど言葉」の違いを正しく理解する「こそあど言葉」は主語または修飾語として使用する最初の一文に「こそあど言葉」を使わないWebライティングでは「こそあど言葉」の使用に注意「こそあど言葉」の違いを正しく理解する前章で、品詞による違いや使い分けを詳しく解説しました。解説した内容を今一度振り返っていただき、正しく理解するようにしましょう。 こそあど言葉を使う際には、常に距離感を意識しておくと、正しい使い方ができるようになります。「こそあど言葉」は主語または修飾語として使用するこそあど言葉のうち、「ここ」「これ」「あれ」といった代名詞は、次の例文のように主語として使います。「これ」をください。「あれ」が私の靴です。「ここ」に行きたいです。「この」「その」「あの」「ああ」など、修飾語として使う言葉もあります。「この」服「あの」時「その」長さ「ああ」したい上記のパターンに合わせて、適切なこそあど言葉を使うように注意しましょう。最初の一文に「こそあど言葉」を使わない文章の最初にこそあど言葉を使うと、言葉がどのような意味を表しているのか伝わらないことがあります。例えば以下のように急に言われても何を取ればよいか戸惑ってしまうのではないでしょうか。「あれ」を取ってください「あれ」が何を指すのかをこそあど言葉を使わずに伝えることで、相手にスムーズに理解してもらえます。醤油をとってください誤解を防ぐために、最初の一文ではこそあど言葉を使わず、具体的な名詞などを使うようにしましょう。Webライティングでは「こそあど言葉」の使用に注意ウェブ上の記事では、ユーザーが目次をクリックすることによって記事の途中から読み始めるということがよくあります。そのため目次項目の本文内にこそあど言葉しか使用されていないと、その部分から読み始めたユーザーにとっては指示語の指す内容が分からないので理解しづらくなってしまいます。「こそあど言葉」を使いこなすために日頃から意識したい3つのポイントこそあど言葉を上手く活用し、読み手がスムーズに理解できるようにするためのポイントについて以下3つを紹介します。ポイント1. 「こそあど言葉」の使用は最低限に抑えるポイント2. 指示語と指示対象をつなげるポイント3. 指示語が示すものを常に考えるポイント1. 「こそあど言葉」の使用は最低限に抑える先ほども解説したように、こそあど言葉を使いすぎると、聞き手に意味が伝わらなくなってしまいます。例文を挙げてみましょう。「私は、家族旅行の行き先を、北海道か沖縄かどちらにしようか迷っています。母は北海道に行きたいと言っていますが、父はそれに反対しています。私はこれに悩んでいます」この例文では、話し手が悩んでいる内容が、旅行の行き先なのか両親の喧嘩なのかがはっきりしていません。次のように変えるとわかりやすくなります。「私は、家族旅行の行き先を、北海道か沖縄かどちらにしようか迷っています。母は北海道に行きたいと言っていますが、父はそれに反対しています。私は行き先に悩んでいます」このように文章を変えると、話し手の悩みが旅行の行き先であることが明確になりました。聞き手の誤解を防ぐためにこそあど言葉を使う箇所は最低限に抑えましょう。ポイント2. 指示語と指示対象をつなげる指示語には、指示対象となる言葉が必ず存在します。指示対象は指示語より前にあるのが一般的ですが、指示語より後に書かれている場合もあります。 文章を読むとき、指示語と指示対象を結びつけるようにすると、指示語を的確に使いこなせるようになります。結びつくかどうか迷ったら、指示対象と思う単語を指示語に当てはめてみましょう。文章の意味がつながれば正解です。指示語と指示対象が正しく結びついている場合「父に帽子を買ってもらいました。"これ"は私のお気に入りです」「父に帽子を買ってもらいました。"帽子"は私のお気に入りです」指示語と指示対象が正しく結びついていない場合「近くにできたカフェに行って買ってきましたが、"これ"はとても美味しいです」「近くにできたカフェに行って買ってきましたが、"カフェ"はとても美味しいです」上述の文章で"これ"が指しているものは明確ではありません。カフェで買ったものですのでおそらく"これ"はコーヒーなどの飲み物を指しているのだと考えられますが、実際どうなのかは文字を捉えただけでは分かりづらくなってしまいます。このように指示語が表すものが省略されていたりすることで指示対象の内容が不明瞭な場合は、読み手や聞き手に文章の内容の判断をゆだねてしまうことになります。ポイント3. 指示語が示すものを常に考える指示語が何を示しているのかを意識しないと、内容の解釈が間違ったり、誤読してしまう恐れがあります。そのため指示語を使用する場合は、記事の校正を行う際に「何を示しているか」を再確認する癖をつけましょう。まとめこそあど言葉について疑問点は解消されましたでしょうか?以下まとめです。こそあど言葉とは、次の4つの品詞をまとめた総称(指示代名詞、形容動詞、副詞、連体詞)話し手、聞き手と物事との距離によってこそあど言葉を使い分ける指示語の種類を間違えてしまうと、文章の意味が相手に伝わらなくなる恐れがある誤解が許されない文章であれば、指示語の使用をできるだけ避けるのも1つの手こそあど言葉は文章を読むときだけでなく、日常会話にも頻繁に出てくる言葉です。本記事で紹介した内容を参考に、より適切な使い方ができるようになるとよいですね。常にこそあど言葉を意識して話したり書いたりすることで、相手に伝わりやすい日本語力を身に付けられるでしょう。