ブログ記事の執筆、プレゼンテーションの資料作成、営業トーク、会社のメンバーとのテキストチャットでのやりとりなど、私たちは一日に何十回も人に何かを伝える機会があります。「人に伝える」という行為は相手に正しく伝わって初めて成功したと言えるので、伝えたい内容を正しく伝えるための技術が私たちには必要です。正しく伝えるための技術の中でも、美しく、読みやすい文章を作成するためには「てにをは」の使い分けを心得ておく必要があります。しかし実際に「てにをは」の定義や具体的な使い分けを説明できる人は、そう多くいないのではないでしょうか?当記事では「てにをは」の基本から間違えやすい用法、正しい日本語力をつける方法を紹介していきます。「てにをは」とは?「てにをは」とは、日本語の単語と単語をつなぐ「は」「が」「に」「を」などの助詞の総称の代名詞です。たとえば、以下の文章の場合を考えてみます。私は駅に向かいます。この場合、「は」と「に」のふたつが助詞にあたります。助詞は「て・に・を・は」の4語のみではないですが、助詞の総称の代名詞として「てにをは」が使われるようになりました。「てにをは」の由来「て・に・を・は」という語源は、かつて漢文を訓読するときに使われた点図にあります。四隅にヲコト点と呼ばれる「て」「に」「を」「は」の四字が描かれていたことから、「てにをは」と呼ばれるようになりました。引用:乎古止点の意味・解説 - Weblio 国語辞典「てにをは」は日本特有のもので英語にはない英語をはじめ、ほとんどの他言語には「てにをは」にあたる助詞が存在しません。英語の場合、be動詞は助詞に近いイメージですが、たとえば「I」につくbe動詞は常に「am(was、been)」であり、内容によって変わることはありません。 助詞ではありませんが、英語では「at」「by」などの前置詞や「but」「and」などの接続詞が「てにをは」に近いといえます。ただし、前置詞・後置詞の誤用にはすぐに分別できますが、「てにをは」は日本語に親しんでいる私たちでさえ使い分けを誤ることがあります。「日本語は難しい」と言われる理由は、この「てにをは」の使い分けにあるのかもしれません。「てにをは」の重要性日本語では「てにをは」にあたる助詞が、単語と単語をつなぎ、文を作ります。その助詞の使い方によって文章の印象や意味が大きく変わります。意思の強さを助詞で表現する意思の強さを表現する際にも、助詞の使い分けが役に立ちます。例えばカフェで飲み物を頼むとき、以下のふたつの注文方法の印象はどう違うでしょうか?では、アイスカフェラテでお願いします。では、アイスカフェラテをお願いします。ふたつを比較した時、後者のほうが「アイスカフェラテが飲みたい」という気持ちが強く伝わってきませんか?「てにをは」の「で」は、自分の意志を表す際には少し弱い印象があり、選択肢に不満を持っていると捉えられるおそれがあります。それも「を」を使うことで、積極的な自分の意志が聞き手に伝わるようになります。 このように自分の意志の強弱を伝える時に「てにをは」を使い分けることで、自分の気持ちのニュアンスを伝えることが可能になります。助詞によって意味が変わるわずか一語の助詞でも、「てにをは」の使い分けを誤ると、文章の意味ががらりと変わってしまいます。 たとえば以下のふたつの文章を読んだ時に、どう受け取りますか?コーヒーが飲みたい。コーヒーを飲みたい。このふたつの文章は一見同じことを言っているように見えますが、ニュアンスは微妙に異なりますよね。何となく前者のほうが主張が激しいと感じるのではないでしょうか?このように使用する助詞次第で、聞き手が受ける印象は大きく変わってきます。 「おしん」や「渡る世間は鬼ばかり」シリーズで有名な脚本家の橋田壽賀子先生は、ストーリーの流れが変わってしまうため、「てにをは」を含む台本の言いかえを役者に対して一切許さなかった、という逸話が残っているほどです。「てにをは」の使い分けは私たち日本人にとって非常に重要ですが、助詞ひとつひとつの意味を説明できる人は人はそう多くはありません。そのなかで正しい使い分けができる人はきちんとしている印象で、仕事の場でもそのスキルが活躍してくれることでしょう。「てにをは」を正しく使い分けるには?「てにをは」を正しく使い分けれるように、間違えやすい事例を用いて解説します。「が」と「は」の使い分け代表的な「てにをは」である「が」と「は」は両方とも主語と一緒に使いますが、一語変わるだけで印象がかなり変わります。 例えば彼がケーキを焼いてくれた。彼はケーキを焼いてくれた。の文章はたった一文字違いですが、前者は「彼」という主語を強調している印象です。一方、後者は事実を客観的に表現しています。主語を強調したいときには「が」を、事実を伝えたいときには「は」を使いましょう。以下のような文章ですと、主語がぼやけた印象を抱かないでしょうか?彼はケーキを焼いたときに、私は勉強していた。これは伝わりづらい表現です。以下のような文章にすると主語が強調され、ニュアンスを正しく伝えることができるようになります。彼がケーキを焼いたときに、私は勉強していた。「へ」と「に」と「まで」の使い分け行き先を表す「へ」「に」「まで」を混同して使う人がいますが、それぞれに違う意味があります。 たとえば、駅に行くことを伝えたい時にも、 駅がある方向に向かうというときには駅へ行きます。を、 駅という目的地を強調したいときには駅に行きます。を、 そして駅に向かう過程を示すときには駅まで行きます。を使います。3つの文章を読み比べると、受け取る印象が大きく変わることが実感できるのではないでしょうか?正しく使い分けることで、自分の動作をより具体的に、正しい印象で伝えることができます。「で」と「を」と「に」の使い分け教室で机があります。明日は学校に試験があります。このふたつの表現に違和感を覚えませんか?正解は教室に机があります。明日は学校で試験があります。です。 モノやコトと一緒に使われ、しばしば混同される「に」と「で」ですが、モノ・コトがある場所を示すときには「に」を、モノ・コトがあることをするために使われる助詞は「で」と分けられます。また、以下のようなふたつの表現もあります。リビングに寝ています。リビングで寝ています。これらはどちらも間違いではありません。 常にリビングで寝ているときには「に」を、一時的にリビングで寝るときには「で」を使うのが適切です。「が」と「を」の使い分け「てにをは」のひとつである「が」と「を」は、両方とも願望や意志を表すときに用います。ただし以下の文章のように、「欲しい」の後に動詞が続くときには「を」を用いるようにしてください。私は本が欲しい。私は本を欲しいと思った。この他にも 「私はコーヒーが飲みたい」 「私はコーヒーを飲みたい」 という2つの文章を比較してわかるように、自分の意志をより強調したいときには「を」よりも「が」を使ったほうが、自分の気持ちをより強く伝えられます。「から」と「より」の使い分け弊社からお伝えします。という表現もあれば、弊社よりお伝えします。という表現もあります。 このふたつはどちらも正解ですが、より文語的でかしこまった言い回しをするときには「より」を用いたほうが丁寧な印象になります。また「より」は比較する際にも用いられる助詞です。肉より魚が好きです。とは言いますが、肉から魚が好きです。とは言いません。この点は「から」と「より」の決定的な違いと言えます。「てにをは」以外の助詞も使い分けて美しい日本語を身につけよう「が」と「の」と「に」の連続利用を避ける「が」「の」「に」といった単純な接続助詞は日本語に欠かせないものですが、連続して使うと稚拙な印象になります。私の父の自動車の運転手の~...。私にすぐに買い物に行くように~...。上の文章のように、単純助詞がひとつの文章の中に3回以上続くと、しつこく聞こえてしまいます。助詞の連続使用は最高でも2回までとするのが良いでしょう。特に文章を書くときにありがちなミスですので、書き終えた後には必ず推敲をして、助詞を連続使用していないかどうかを確認してください。4種類の助詞の役割を復習しよう助詞には、格助詞、副助詞、接続助詞、終助詞の4つが存在します。助詞にはそれぞれ役割があり、 例えば格助詞は体言の後ろについて他の言葉との関係性を表すときに使います。以下の文章では「が」や「の」が格助詞としての機能を果たしています。私が言いました。この犬はあなたのペットです。次に、副助詞は強調や疑問などを示す助詞で、述語の活用形に影響を与えるものです。今年こそライバルに勝ちたい。あなたも私の仲間です。次に、接続助詞はその名の通り、文節をつないで順接や逆接として機能します。以下の文章には接続助詞の「から」「も」「ながら」が使われています。たくさん寝たから、すっきりした。試してみても、一向に上手くできなかった。テレビを見ながら考える。次に終助詞は、文末について疑問や命令など、さまざまな意味を文章に持たせる助詞です。以下の文章では「な」「の」「か」が終助詞に当たります。それを触るな。どうしてその時計を買ったの?フランス語は得意ですか?すべてを把握するのは難しいものですが、ある程度分類できるようになれば、助詞の役割を理解できたと言っても過言ではありません。「の」「に」「も」は他の言葉に置き換える先日のサッカー大会の優勝校の〇〇学校を見学しに行く。5月に母さんに会いに東京に行く。上述の文章のように、助詞の連続使用は幼稚な印象を与えますが、つい使いがちな表現であることも確かです。 文章を推敲したときに、助詞の連続使用が気になるようであれば、他の言葉に置き換えてみましょう。先日のサッカー大会で優勝した〇〇学校を見学しに行く。5月になったら、母さんと会うために東京へ行く。このように助詞の連続使用を避けるだけで、スマートな文章にまとめられます。助詞の「の」は「こと」に置き換えられることが多いため、推敲時には一度意識してみてください。わかりやすく、正しく伝わる文章を書くための3つのポイントポイント1. 文章を他の人にチェックしてもらう自分が執筆した文章を他者にチェックしてもらうことで、一段と質を高められるようになります。「自分が書いた文章は完璧!」と思っていても、第三者の視点からすると分かりにくいということはよくあります。また「てにをは」の誤用も見つかるかもしれません。一度自分が作成した文章を第三者に確認してもらい、 客観的な視点から見た時の意見をもらうのが良いでしょう。ポイント2. 自分の文章を声に出して読み上げる完成させた文章を一晩寝かせて翌日に声に出して読み返すのも、文章力向上につながることが多いです。実際に私も、ブログ記事程度の長さの重要な文章は翌日に一度声に出して読み返すようにしています。そうすると書き上げた直後よりも冷静な頭で、自分の文章に向き合うことができます。また声に出して読むことで、文章のリズムが取れていないところにも気が付けるようになるはずです。ポイント3. てにをはルールブックを用意するすばる舎から出版されている「日本語てにをはルール」(石黒圭・著)など、「てにをは」や正しい日本語の使い方を解説した書籍を一冊持っておくだけでも、文章力の向上に役立ちます。ちょっとした「てにをは」の違いがわからなければすぐに調べて、自分の文章をブラッシュアップさせていきましょう。「わからなければ、すぐに調べる」という習慣を身に付けることが重要です。「てにをは」を使いこなすには、日頃からの練習が必要普段何気なく使っている「てにをは」も、ひとつひとつの意味を理解することで、話すときにも文章を書くときにも、違いを意識して正しく使おうとする姿勢が身についていきます。少しでもわからないと思った時には辞書などで調べて、書いた文章は誰かに確認を依頼し、誤用を指摘してもらいましょう。それだけでも日本語力は大きく変わってくるはずです。関連記事:顧客目線のブログとSEO対策で、7.7倍のリードを獲得できるまで伸びた医療ブログの改善事例(医療関連ブログ)