私たちのクライアントは、月額予算数十万円からスタートし、目的や目標の達成を確認しながら少しずつ規模を大きくし、ビジネスを成長させています。私たちはそのような方々のサポートを得意としているため、ご相談の入口も「一気に数百万円の広告予算を投資するのは怖いけれど、予定の20%くらいで始めてみて、費用対効果が合いそうなら加速させたい」という方々が多いです。本記事ではそんな方々にお伝えしている内容をベースに、月50万円のリスティング広告で失敗してしまうパターンをはじめ、弊社の広告運用の現場では何を考えているのか?どこに気を遣っているのか?をまとめました。既にやっている人にとっては「こんなの当たり前でしょ」という内容ですが、月数万〜100万円前後の広告アカウントではこの当たり前が蔑ろにされていることが多々あります。成果が出ていない場合は、まずはこれらを確認してみましょう。月50万円のリスティング広告・SNS広告で失敗する理由「月50万円の予算をかけているけれど、うまくいかなくて困っている」という相談を過去何度もいただきました。広告運用以外にうまくいかない原因がある場合ももちろんありますが、広告アカウント内に原因がある場合は以下の6つに分類されることが多いです。目的や目標を明確にしていない退却のデッドラインを決めない打ち手を広げすぎる成果が出ていないのに、開始時の設定のまま配信を続けているPDCAサイクルをもとに施策の改善がされていない広告配信で得られたデータを他のマーケティング活動に活用していない目的や目標を明確にしていない目的や目標は曖昧になっていませんか?それらが曖昧なままでの広告配信は、適切な分析や判断、改善はできないでしょう。広告配信は投資活動であり、広告費はそのための原資です。どんな目的で広告配信をするのか、どんな目標を達成したいのかを明確にし、チーム内で共通認識を持つべきと私たちは考えます。広告配信の目的はさまざまですが、たとえば以下のような目的があるはずです。新規リードの獲得既存顧客の満足度向上再購入の促進見込み顧客や既存顧客とのコミュニケーション実際の広告配信の現場ではクライアントの要望をもとに目的をさらに深掘りしますが、まずは目的を明確に定めましょう。そして目的を、具体的な目標(= 数値目標)に変換することで、広告の管理画面で「何を達成すべきなのか」が定まります。目的と目標を明確にするだけで、成功確率はグンと上がるでしょう。撤退のデッドラインを決めない「これを越えたら諦めて撤退しよう」という撤退のデッドラインは決めましょう。それは時間でも、予算でも、検証したい施策の数でもいいです。事業のリソースに合わせて設定すべきです。開始直後から上手くいくのは稀ですが、上手くいかない状態のまま予定以上の時間やお金を使ってしまうことは避けるべきです。サンクコスト(※)と言ったりしますが、デッドラインを決めていないと、かけた時間やお金を取り返そうという心理が働き、諦めることができなくなる可能性があります。こういった心理状態に陥り合理的判断が下せないような状態を避けるためにも、撤退のデッドラインを決めるようにしましょう。※サンクコスト・・・事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小・中止をしても戻って来ない資金や労力のこと。埋没費用ともいう。(中略)埋没費用は、事業や行為を中止しても戻ってくるものではない。しかし、埋没費用を考慮した結果として、合理的でない誤った判断を下す場合がしばしばある。引用:サンクコスト(埋没費用) - Wikipedia打ち手を広げすぎるこの予算規模で失敗する原因で最も多いのが、打ち手を広げすぎることです。打ち手が広がれば広がるほど、データが分散し検証が遅れます。コンポーネント(要素)の数を減らし、データの分散を防ぎましょう。そうすれば、仮説の検証スピードが大幅にアップします。広告予算に上限がある以上、収集できるデータにも上限があります。データが分散すればするほど、検証に時間がかかり、費用対効果の高い打ち手を見つけるのが遅れることにつながりますので、打ち手を広げすぎないよう注意しましょう。過去にご相談いただいた、打ち手を広げすぎていたことによる失敗例をご紹介します。(この例は、月50万円ほどの予算の場合です。)多数の広告媒体(Google 広告、Yahoo!広告、Facebook広告、Instagram広告、LINE広告、Twitter広告など)で広告配信を実施キーワードを約百個×全マッチタイプで登録して広告配信を実施ペルソナを多数作り、ペルソナに応じてキャンペーンを作成して広告配信を実施多数の商品やサービスに対して、優先順位を付けず、予算を均等配分して広告配信を実施LPを多数作り、データのほぼ貯まらないスプリットテスト(ABテスト)を実施この予算規模での広告配信では、広告配信前の顧客理解や調査段階で、「ここに広告を配信するのが一番費用対効果が高いはずだ」という仮説を出し、そこに狙い撃ちしなければなりません。成果が出ていないのに、開始時の設定のまま配信を続けているどれだけ事前の調査を行い、完璧な広告アカウントを準備したつもりでも、予想通りの配信結果となることは少ないはずです。その状態で、キーワードや広告を変更せず放置していてはアカウントが改善されるはずはありません。たしかに、自動入札機能や機械学習のためのデータが貯まるまで、アカウントに大きな変更を加えないことはありますが、改善をしない、PDCAを回さない、とは意味がまったく異なります。成果が出ていないままキーワードや広告に変更を加えていないアカウントは要注意ですし、すぐにでも改善を加え、施策のPDCAが回るような仕組みを作るべきです。リスティング広告は、仮説が外れ、予想通りの配信結果とならなかったとしても、配信内容を調整できるメンテナンス性の高さが特徴です。納得できる成果が出るまで徹底的に改善していきましょう。PDCAサイクルをもとに施策の改善がされていない広告運用の基本は、PDCAサイクル(※)に則った運用です。Google 広告やInstagram広告をはじめとした運用型広告の良いところは、実行(Do)した結果が、数値に現れ、それを元に定量的に評価(Check)できる点です。PDCAサイクルを実行するのに適した広告手法でもあるため、必ずこのフレームワークに則って運用しましょう。場当たり的に思い付いた施策や調整を行っている状態は、ギャンブルに近い運用です。お客様から広告費をお預かりしている以上、ギャンブルのような広告運用をするのではなく、着実に改善していく運用(改善にはつながらなくても、適切な検証結果のデータが取れる運用)を行いたいものです。※PDCAサイクル・・・W・エドワーズ・デミングが提唱した品質管理など業務管理における継続的な改善方法です。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4段階を繰り返して業務を継続的に改善していきます。参照:PDCAサイクル - Wikipedia広告配信で得られたデータを他のマーケティング活動に活用していない広告配信で得られたデータは、その他のマーケティング活動を改善するためのアイデアの宝庫です。せっかく得られたデータを活用しない手はないでしょう。目的を「新規ユーザーの獲得」としてリスティング広告を配信する場合、広告はユーザーとHPをつなぐ手段のひとつでしかありません。その先に、HPの閲覧→お問い合わせ→営業→受注といったプロセスがつながっています。リスティング広告だけ最適化して受注を増やすには限界があるため、得られたデータをもとに改善できるものは改善していきましょう。もちろん時間やお金や人のリソースは限られているので、優先順位をつけながらですが。たとえば、広告配信で得られたデータを元にこんなこともできますよね。パフォーマンスの良いテキスト広告をもとに、LPのファーストビューの文章を変えてみるよく検索されるキーワード(多くの人が困っている)をもとに、解決につながるブログを書いてみるパフォーマンスの良いバナー画像のデザインをもとに、LPのデザインを変えてみるお問い合わせが多い時間帯に、電話受付が混み合わないよう人員を増やすお問い合わせの内容をもとに、お問い合わせフォームを調整してリードの質を改善する月50万円の広告予算であれば、施策は増やさず、レバレッジの効く施策に集中すべきです。しかしリスティング広告に集中したとしても、それだけではなんともならないことがあるのも事実です。得られたデータを活用して、やれることはなるべく実行しましょう。弊社で行なっている月50万円の広告運用の考え方私たちが大切にしていることや気を付けていることをまとめました。月50万円以外の広告配信でも共通して大切にしていることもありますが、月50万円の広告運用をお任せいただく際には、この考え方をもとに運用していることが多いです。事前準備が結果を分ける施策の優先順位をつけ、実行する施策を絞る当たり施策を見つける成果の出た施策を最大化する新しい施策を試すこれらは図のようなサイクルで進んでいきます。すべての広告運用がこのサイクルで進むわけではないですが、この予算規模で運用する際には、ひとつずつ着実に成果の出る施策を増やしていきます。1. 事前準備が結果を分けるこの予算規模で一番大切なことは「リソースを集中させること」です。リソースを集中させるために、施策を厳選する必要があり、施策を厳選するために事前調査を徹底的に行います。(弊社が行っている事前調査については、サービスページ※に記載がございます。)※関連ページ:リスティング広告・SNS広告 運用代行サービスの利用者や商品の購入者となるエンドユーザーの調査や理解にはもちろん時間を割くべきですし、市場の調査、競合の調査、商品開発の経緯、過去のマーケティング活動の結果などを知らずして、効率的に勝てる施策を見つけるのは困難と私たちは考えます。兵法書の「孫子」には、以下のような言葉があります。「敵を知って、味方の事も知っていれば、百回戦っても敗れることはない」という意味です。私たちマーケティング支援会社はクライアントを勝たせるために存在します。そのためまずはクライアント自身や取り巻く環境を徹底的に調査し、理解に努めなければなりません。彼を知り己を知れば百戦殆からず引用:孫子2. 施策の優先順位をつけ、実行する施策を絞る上述した、月50万円の広告運用で失敗する理由で「打ち手を広げすぎる」と記載しました。打ち手を広ければ広げるほど、1つの打ち手から得られるデータは減り、分析に時間がかかります。限られた予算や時間で、最大の成果を出すためにも、私たちは事前調査の後に施策の優先順位を付け、実行する施策を絞り、可能性の高いものから順に実行します。3. 当たり施策を見つける施策の優先順位をつけ、優先度の高いものから実行したとしても、すぐに成果が出ることはないでしょう。ここでは、PDCAサイクルを実行するフェーズになります。すぐに成果が出なくても、行った調整がデータにどのように影響しているのか、何故このような結果になったのかを思考しながら、改善を続けます。しかし、どこまで調整を続けても成果が出ないことがあります。そんな時に、施策ごとに予算や期間などのデッドラインを決めておけば、あきらめて次の施策に移ることができます。優先度が次に高い施策に素早く乗り換えて、そちらで成果が出るよう調整を行います。またPDCAサイクルを実行するにあたって、弊社が大切にしていることを紹介します。リスティング広告は配信結果が数字で見れる点が優れていますが、すべての結果が数字で現れるわけではありません。顧客の感情や広告の見たときの印象などは管理画面からは知ることができないため、どこまでいっても運用者の想像の範疇を超えません。そして月50万円の広告配信は、月数千万の広告配信と比べて、取得できるデータの量は必然と少なくなります。私たちは、すべての判断を数字のデータから行おうとせず、データで見れない部分にも目を向けようとしています。そしてその想像の精度を上げるためにも、事前調査や毎日のアカウントチェックを徹底して行っています。4. 成果の出た施策を最大化する調整を続けていき成果が出はじめたら(≒ 目標CPAを達成しはじめたら)、その施策で成果を最大化できるように調整します。弊社の場合、準備段階で詳細なペルソナやカスタマージャーニーマップを作成しているので、この段階での配信設定はかなり細かいターゲティングになっています。しかし、そこまでペルソナやカスタマージャーニーマップ通りのユーザーはいないのも理解しているので、成果を最大化するためにターゲティングを少しずつ広げる調整を行います。下の画像は弊社が作成したペルソナの例です。たとえば以下のような調整をかけることがあります。検索意図は同じだが現状の登録キーワードでは広告表示されていないキーワードを追加登録広告を配信する時間帯、デバイス、ユーザー属性の設定を広げる同じ広告やターゲティング設定で別の媒体を試す既存の広告、広告表示オプションとは異なる内容のものを追加する5. 新しい施策を試すこれ以上、現施策や今の予算では成果を増やせないという判断ができたら、次の判断を行います。成果の出ている施策で予算を使い切ってしまう場合は、予算の増額を提案予算に余裕がある場合は、残りの予算で新しい施策を実施既存の施策で予算を使い切ってしまう場合は、予算の増額をご提案します。目標CPAを達成していれば広告費を増やすほど売上は増えていくはずです(目標CPAの設定が正しく行われている前提ですが。目標CPAの計算は下記の記事※を参考に)。ただ事業のフェーズや営業チームの体制によってはリードの増加に対応できない場合があるので、事前の相談は必須です。※関連記事:【広告配信を始める前に】リスティング広告の目標CPAの計算方法とは?ビジネスモデル別にわかりやすく解説!また、成果の出ている既存の施策を最大化したものの、予算がまだ余っている場合は、優先度の高い他の施策を試してみましょう。現段階では、ひとつの施策に成果が依存している段階ですので、その施策がうまくいかなくなれば、一気に売上に影響します。リード獲得のポートフォリオをひとつに依存するのは非常に怖いことですので、余裕がある場合はすぐに新しい施策を試し、ポートフォリオを分散させましょう。投資の世界でも、このような格言があります。「卵は一つのカゴに盛るな」意味. 卵を一つのカゴに盛ると、そのカゴを落とした場合には、全部の卵が割れてしまうかもしれないが、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、そのうちの一つのカゴを落としカゴの卵が割れて駄目になったとしても、他のカゴの卵は影響を受けずにすむということ。特定の商品だけに投資をするのではなく、複数の商品に投資を行い、リスクを分散させた方がよいという教え(=銘柄分散投資)。引用:卵は一つのカゴに盛るな - 野村證券株式会社 証券用語解説集まとめ月50万円のリスティング広告・SNS広告で失敗する理由は大きく以下の6つに分けられます。目的や目標を明確にしていない退却のデッドラインを決めない打ち手を広げすぎる成果が出ていないのに、開始時の設定のまま配信を続けているPDCAサイクルをもとに施策の改善がされていない広告配信で得られたデータを他のマーケティング活動に活用していないまた、弊社で行なっている月50万円の広告運用では、以下のサイクルを回すことが多いです。事前準備が結果を分ける施策の優先順位をつけ、実行する施策を絞る当たり施策を見つける成果の出た施策を最大化する新しい施策を試す(3に戻る)この方法で100%成果が出る保証はないですが、闇雲に広告配信をするよりも成果が出る可能性は高いですし、成果が出なかったとしても次に活かせるデータが取れるはずです。月50万円という大きな金額を広告費として使用するのであれば、投機的な使い方をするのではなく、リターンが生まれる使い方をしたいですよね。弊社では、運用型広告のご支援事例が多数ございます。以下の記事は運用型広告をメイン施策とし、LP制作やコンテンツ記事作りにも携わらせていただいた事例です。併せてこちらも読んでいただけますと幸いです。関連記事:スタートアップの起業家に必要な、スピードを落とさず戦略・施策を適切に選択できる「相談役」兼「実行役」