広告を運用するうえで当社としても、私個人としても大切にしていることがあります。それはクライアントの商品やサービスを、実際に広告運用者自身が購入、体験する『顧客の顧客になる』ということです。クライアントの代理で広告配信する私たちが成果を出せるかどうかは、エンドユーザーに対する理解の深さが大きく関係します。そのためのプロセスの1つが『顧客の顧客になる』ということです。これから広告代理店を通して広告配信をしようと考えている企業の担当者の方や、新しく広告運用者としてキャリアをスタートする方にとって有意義な内容となれば幸いです。※この記事では『クライアント=顧客』『エンドユーザー=顧客の顧客』と記載しますが、登場人物が少々紛らわしくなりますので、下にイラストで登場人物を整理します。広告運用者が顧客の顧客になるメリット顧客の顧客になることで広告運用上どのようなメリットがあるのでしょうか?以下のメリットそれぞれについて解説していきます。エンドユーザーと目線が合うクライアントと目線が合う事業に対する抽象度が高くなり施策のイメージがしやすくなる事業主側では気づけない誤解に気づくことができるエンドユーザーと目線が合うまず顧客の顧客になることで、エンドユーザー(つまり広告でターゲットとしているユーザー)の気持ちを理解することができます。広告運用者は常々、自分たちが配信している広告の対象となるエンドユーザーのことを考えて運用しているでしょう。そうしたユーザーの行動や思考を慮って広告文やキーワード、クリエイティブの調整をしているはずです。自身が実際にエンドユーザーとなることで「このサービスを検討している人はこんな訴求が気になるはずだ」 「こんな言葉を使って検索するはずだ」といったことが分かります。エンドユーザーと同じ目線に立つことで、どういう広告配信が効果的か、どんな訴求が効果的かといったことが感覚的につかめるようになります。クライアントと目線が合う次に自身が商品やサービスの利用者となることで、クライアントの商材に対して理解が深まります。商品・サービスに対する理解の深さではクライアントの右に出るものはいないでしょう。実はそんなクライアントも、自社の商品やサービスに関して常に知りたがっていることがあります。それは『自分たちの商品のことをお客さんはどう評価しているか』ということです。私は前職でtoC商材のメーカーに勤めていましたが、エンドユーザーが自社商品をどう選んでいるのか、使っていてどう感じるのかということには強い関心を持っていました。自身が商品やサービスの利用者となることで、クライアントにとって単なる"広告運用者"だったのが"エンドユーザーでもある広告運用者"となります。打ち合わせ中などにエンドユーザーならではの視点をクライアントから求められる機会も増えるでしょう。関連記事:クライアントと長期的に良好な関係を築くために、アルテナにある7つの文化。事業に対する抽象度が高くなり施策のイメージがしやすくなるクライアントの商品やサービスを利用する過程で、その事業を取り巻く市場環境や競合他社の状況について詳しくなり、事業に対する抽象度が高くなるのもメリットの1つです。競合他社とくらべてクライアントのサービスはどういった点がユーザーに喜ばれているのか、どういったユーザーのニーズを満たしているのかなどといった点が明らかになっていきます。そうすることでクライアントの商品・サービスに合った訴求方法がイメージしやすくなるのです。たとえば企業のホームページを見ただけの、事業に対する抽象度が低い状態で広告文を作成してしまうと、どうしても企業側の押し出したいことが詰め込まれた"商品ラベル"のような広告文となってしまいます。そうした場合、エンドユーザーにも表面的な良さしか伝えられません。しかし実際に商品やサービスを広告運用者自身が使用することで、商品の選定の過程でキーになるポイントやユーザー心理を織り込んだ広告文が作りやすくなるため、エンドユーザーの心に留まる広告文が作りやすくなります。このようにクライアントの商品やサービスを広告運用者自身が利用することで、事業に対する抽象度が高くなり、ユーザー心理のより深いところに沿った訴求方法がイメージしやすくなります。事業主側では気づけない点に気がつくことができるこれは私がかつて事業主側だったころに感じたことなのですが、事業主側は必ずしもエンドユーザーの心理を正しく捉えきれていない場合があります。事業主側はその商品やサービスのことを毎日考え続けているために、まっさらなエンドユーザーの心理を自分の中に投影するのが難しくなってしまうのです。私自身『自社の商材を知ってもらって、合理的な判断さえしてもらえれば売れるはず』と思ってしまっていた時期がありました。反対に広告運用者が初めて商品やサービスを利用する場合、事業主側よりもエンドユーザーに近い立ち位置に立つことができます。もしかしたら事業主側がそこまで意識していなかった魅力を発見できるかもしれませんし、反対に事業主側が押し出しているポイントが実際のエンドユーザーには刺さらないということに気付けるかもしれません。関連記事:マーケティング支援者とクライアントが円滑にコミュニケーションを取るために。今すぐできる5つの工夫具体的にどんな事をするの?広告運用者が顧客の顧客となる重要性についてお話しました。次は具体的にどのようなことをするとよいのかについて解説していきます。来店してみる店舗があるお店なら実際に来店してみます。来店して得られる情報は、クライアントから聞いて得られる情報とは性質が異なりよりリアルにエンドユーザーのイメージを捉えることができるからです。クライアントから聞くことで事前に年代や性別といったターゲットとしているユーザー属性は把握できます。しかし来店することで『どんな雰囲気のお客さんが多いか』『そこではお客さんは何に興味を示しているか』『どんな会話をしているか』などといった情報を得ることができるのです。そうした情報を元にエンドユーザーをイメージすることで、広告文などのクリエイティブをよりユーザーの心に寄り添ったものにできます。女性がターゲットのお店なら私は妻と来店し、妻が何に興味を持っているか、何に価値を感じているかをそれとなく観察させてもらっています。関連記事:広告代理店と良好な関係を築き 成果をあげるためのコミュニケーション方法カスタマージャーニーマップに沿って購入してみる有形無形に関わらずクライアントの商品やサービスはお金を払って利用してみます。それもただ商品を買うのではなく、カスタマージャーニーマップを作成していればその流れに沿って一連の購買体験をします。カスタマージャーニーマップにて競合他社と比較するステップが想定されていれば、エンドユーザーの気持ちになりきって実際に比較してみます。他社の商品と比較することで、買う人の立場ならではの視点からクライアントの商品の良さに気づくことができるでしょう。"買う人の立場"というのが重要で、意外とあるのがクライアントが思っていた商品やサービスの魅力を買い手は検討する段階では気が付かない、いわば潜在的なニーズとなっているケースです。潜在的なニーズへの訴求を検索広告でアピールするのが難しい場合は、ディスプレイ広告やSNS広告を使用したほうが成果に繋がりやすいこともあります。そうした体験によって得た知見をもとに「ユーザーはこういうサービスをさがしているのではないか?」といった仮説を立てます。そうした仮説を元に広告文や広告画像といったクリエイティブを作成していくことで、より費用対効果の高い広告運用に近づくはずです。商品やサービスを実際に使ってみる商品やサービスを広告運用者自身で実際に使ってみるのもおすすめです。実際に利用してみないと気づきにくいような、ユーザーが感じるメリットや懸念点に気づくことができます。たとえば家事代行サービスの場合、実際に使ってみることで「他人が家に来る」ということの懸念をよりリアルに感じることができます。あらかじめ運用者が家事代行サービスを利用していれば「見られたくないものがある」「どのような人が来るのか不安だ」といった懸念を感じることを先回りして予測できるので、そういったユーザー心理に寄り添った広告文を作成することもできます。実際に使ってみないと、クライアントに聞くだけでは分からないことはたくさんあるので、ぜひ運用する前に利用してみるのがよいでしょう。エンドユーザーと会話してみるすでに商品やサービスを利用しているエンドユーザーは非常に貴重な情報源です。そういった方々に利用に至った背景や、商品を選んだ際に検討したことなどをヒアリングをします。クライアントの商品そのものではなくとも、同じような商品を利用してる方であれば大丈夫です。実際のエンドユーザーに話を聞くことで「サービスを検討する際にお店のこんな情報を見た」など、自分では気づけない意外なユーザー心理を知ることができます。たとえば私はとある店舗型ビジネスの広告を運用しているのですが、知人が同じ業態のサービスを最近利用し始めたと聞いたので話を聞いてみたことがあります。想定していた商圏は車で10分以内だったのですが、知人は15分以上かけて毎月通っていました。そのお店を選んだ決め手を聞くと、「口コミで丁寧なサービスを提供していることが分かったから」とのことでした。『多少であれば移動に時間がかかったとしても、本当によいサービスを受けたい』というユーザー心理を参考に、広告文の訴求点を変更したことで成果が改善したこともありました。運用者が普段からできること顧客の顧客になるということは、自身の中の"エンドユーザーの感覚"の幅を広げることに繋がります。担当するクライアントのサービスだけでなく、世の中の様々なサービスを利用して消費者体験をすることで広告運用者として役に立つマインドも広がるはずです。最後に運用者が普段からできることについて解説します。いろんなことを体験しておく先にも述べましたがさまざまな消費者体験をすることで、自身の中の"エンドユーザーの感覚"を広く深いものにすることができます。自分の中にエンドユーザーの感覚が蓄積されるほど、普段の広告運用業務でユーザー心理に適った施策の案が思い浮かぶようになります。その蓄積が広告運用者としての血となり肉となることで、クライアントから頼られる独自のアイデンティティを持った存在になれるはずです。そのため、私は毎月1回は家族で旅行するようにしたり、気になるサービスがあれば積極的に利用してみたりしています。これまで全く興味のなかった腕時計も、周りの人から話を聞いているうちに欲しくなりローンを組んで買ってしまったこともあります。自分が普段しないような行動を意識的にしてみるのもいいかもしれません。そうしたエンドユーザーとしての感覚を広く蓄積していくことで、マーケット感覚が広がり様々な商材の広告配信も当事者視点を持って運用することができます。たくさんの人と関わっておくまたたくさんの人と関わりを持つことで、自分一人で経験できること以上の経験を追体験できます。自分以外の人の購買体験を聞いたり、趣味の話を聞いたりなど関り方はなんでも構いません。広告の施策を考えるうえで自分をペルソナに重ねて「自分ならどうする?」と考えることも必要ですが、よりペルソナと属性や境遇が近い人を思い浮かべて「あの人ならどうする?」と考えられるともっと有効な施策を検討できます。私はよく自分より年上の知り合いの方を想像して「あの人ならどんな語句で検索するだろう」「あの人は普段どんなサイトを見ているだろう」と考えます。そうした想像を元に検索キーワードや広告文を検討したり、ディスプレイ広告の配信先を検討したりします。自分自身の体験や感覚の幅だけではどうしても狭くなってしまいますが、自分とは全くことなる属性の人たちと関わることで施策を検討する際の幅も大きく広げることができるのです。普段の行動に気を留めておく普段の何気ない行動にも気を留めておくのもおすすめです。購入や情報収集とった自分の行動に気を留めておくことで、広告施策のヒントを得られることもあります。具体的には自分がとある商品やサービスを購入しようとしているとき『その発端は何であったか』を思い起こします。商品やサービスを認知してからどのようなステップを経て購入に至ったのかを振り返ることで、その後の広告運用で過去に体験したことが活きてくるからです。そういった何気ない気づきを忘れないためにも、思いついたことはTwitterに投稿するなど、形に残るアウトプットをするのもいいですね。さいごにここまで広告運用者が"顧客の顧客"になる重要性について解説しました。これからWeb広告を運用していく方は、ぜひクライアントの商品やサービスはもちろん、様々な購買体験を積極的にしてエンドユーザーの感覚を蓄積し、よりユーザーに寄り添った広告施策が提案できるようになるとよいですね。広告運用を依頼する代理店を選ばれている事業会社の方は、広告運用者がどれだけ自社の商品やサービスと向き合ってくれるのかについてもそれとなく気にしてみても良いかもしれません。皆様の広告施策がよりよいものとなり、エンドユーザーの広告体験の質が向上していくことにつながれば幸いです。関連記事:月50万円の広告配信を有意義なものにするために。望んだ成果が出ない理由と、私たちが成果を出すために意識していること