情報過多時代のBtoBサイトでは「簡潔な情報提供」と「信頼性の構築」が重要な鍵となってきます。企業の意思決定者は、膨大な情報をもとにサービスの良し悪しを見極め、スピーディに判断を下す必要があるからです。本記事では、300名を対象にした調査結果から見えてきた、BtoBサイトの評価基準と情報設計のポイントについて解説します。調査から読み取るBtoBサイトの評価基準弊社にて、300名を対象にした「法人向けサービスにおけるWebサイトの印象調査」を実施しました。本調査では、企業の意思決定に関わる担当者が、Webサイトのどのような要素をポジティブまたはネガティブに評価するのかをアンケートし、改めてBtoBサイトの評価基準について調べました。記事:「BtoBのWebサイトは情報を増やしすぎると逆効果? 法人向けサービスにおけるWebサイトの印象調査を実施」- アルテナ株式会社「情報の簡潔さ」がもっともポジティブな評価今回の調査項目である「企業向けサービスを検討する際、Webサイトのどのような要素がポジティブな影響するか」という問いに対して、もっとも票が多かったのは「必要最小限の情報による判断のしやすさ」92票、次いで「明確な経営理念」が90票でした。これは情報過多時代において、より簡潔で明確な情報提供の重要性を示唆していると考えます。「情報は多ければ多いほど良い」というわけではなく、むしろ簡潔な情報が好まれる傾向にあることがわかります。「失敗事例」が求められるのは「信頼性」を判断できる材料を探しているためBtoBサイトに求められる要素として「信頼性」があげられます。今回の調査においても、失敗事例を含む正直な顧客事例(81票)となっており、企業の誠実さを示すより透明性の高いコンテンツを求めていることがわかります。企業間取引においては「信頼」は非常に重要な要素になりますが、多くのBtoB企業のWebサイトは「良い面」ばかりを示すコンテンツが多く、フラットに判断できる要素が少ないようにも思います。あえて、リスクや失敗事例などを出すことはむしろ信頼を勝ち取る差別化につながるかもしれませんね。簡潔な情報は「判断しやすい」調査結果が示すように「なぜ簡潔な情報が求められているのか」ということを考えてみたいと思います。かつては十分な時間をかけて情報収集や検討を行うことが当たり前でしたが、いまは一人が複数のプロジェクトを同時進行で担当することが一般的になりました。その結果、意思決定者の「情報処理の負荷」が増し、判断しやすい「より本質的な」情報へのニーズが高まり、簡潔で的確な情報提供が重要視されるようになったのではないかと考えます。そこで情報を提供する側が大切にしなければいけないのは、「顧客がサイトを見て判断のしやすい情報かどうか」という視点です。問い合わせや資料請求といった追加のアクションを要求する前に、意思決定に必要な情報をわかりやすく伝えることが重要です。「信頼」は複数の透明性のあるコンテンツから生まれる調査結果が示すように、「信頼」は企業が提供する様々な透明性のあるコンテンツから総合的に形成されます。「失敗事例も含めた正直な顧客事例」が81票を集めたことからも明らかなように、とくに企業間では良い面だけでなく課題や失敗も正直に開示することが評価されています。サービスの仕様やコスト構造はもちろん、具体的なサポート体制の説明、業界知見やノウハウの共有など、多角的な情報を発信することで「この企業なら安心して任せられそう」という安心感が生まれやすくなります。BtoB取引において信頼は最も重要な要素の一つであり、起こりうるリスクや導入時の課題、それに対する対応策などを誠実に示すことで、「この会社は誠実に向き合ってくれる」という評価につながります。「判断しやすさ」と「信頼性」を強化するために必要なサイトづくりのポイントBtoB企業のWebサイトには「必要な情報を、必要な人に、適切なタイミングで届ける」ことが求められています。検討のスピードアップと意思決定の質を高めるために必要なポイントをご紹介します。ポイント①:商品・サービスの説明不足を避けるよく「業界の人なら分かるはず」と情報を省いてしまうケースを見かけます。調査結果では簡潔な情報が求められていることわかりましたが、情報不足はむしろ検討を遅らせる原因になります。なぜなら、BtoB製品の導入検討では、社内の様々な部門や役職の人たちに説明する必要があるからです。当事者には分かっていても、意思決定者や他部門の人には分からない。この情報ギャップを埋められないと、検討は必ず停滞してしまいます。関連記事:DMUとは?複数人の意思決定を後押しするために、まず最初にDMUを考えてみようポイント②:信頼性を感じさせる適切な情報を提供する取引先を選ぶとき、やはり重要な要素になってくるのが「この会社を信頼していいのか」という点です。しかしながら信頼されたいがあまり「私の会社は信頼できます!」と自らが語っても信頼されません。そこで間接的に信頼性が伝わる導入実績や具体的な成果、サポート体制。こういった情報をオープンに示していくことで、自然と信頼関係は築かれていきます。特に、業界特有の課題に対する知見や、長期的なサポート体制の具体例は、信頼構築の重要な要素となります。私自身もさまざまな企業に対して、Webサイトを通じて発注やお取引をさせていただきますが、やはり「お客様の声や事例」など第三者との関係性が明らかになるコンテンツが充実していたり、その業界を深く理解していないとわからないようなノウハウがブログとして発信されていたりすると、「この企業は信頼できそうだな」という印象を受けます。ポイント③:読みやすさを意識した文章量「とにかく情報を詰め込めば伝わる」という情報提供者の勘違いで、顧客は都合よくすべての情報をキャッチアップしてくれるわけではありません。なぜなら、多忙なビジネスパーソンにとって「時間」は最も重要な経営資源だからです。複数の案件を並行して検討する中で、長文を読み解く余裕などありません。だからこそ、短く、的確に、本質を伝えることが重要なのです。たとえば、「導入効果」を伝える際、長々とした文章で説明するのではなく、「◯○の業務時間が50%削減」「コスト効率が30%向上」といった、数値を使った短いメッセージに集約するなど、パッと見て理解できる形に情報を最適化することが重要です。ポイント④:解決できる課題を前面に出す「この機能が素晴らしい」より大切なのは「こんな課題が解決できる」という説明です。お客様が本当に知りたいのは、自社の課題解決方法。そこに焦点を当てた説明が、一番の近道となります。機能説明に終始せず、その機能がもたらす具体的な業務改善や経営課題の解決方法を示すことが重要です。依頼先の企業を探すとき「結局、今困っているこの課題は解決できるの?」というモヤモヤした気持ちで終わるWebサイトに出会ったことはありませんか?サービスの内容を具体的に書くだけは、その業界に精通していなければ課題解決に繋がりそうか判断できず、むしろマイナス印象に繋がる可能性もあるので注意が必要です。ポイント⑤:商談前に80%の判断材料を提供する気持ちで「詳しいことは営業から」というのは顧客ファーストではありません。早い段階からコンタクトを取りたいがあまり、情報をあえてふせ問い合わせへと繋げるケースを多く見かけますが、基本的な情報は事前に8割くらい出しておくぐらいの気持ちで情報を開示しましょう。そうすることで、商談の段階でより深い話ができるようになり、自社の良さや商品の魅力を理解した上で望んでくれるため成約率も高い傾向にあります。私の場合、どの企業に依頼するかは概ね決めたうえで、お問合せすることが多いです。やはり営業と1時間話すだけでは理解が深まらず、判断ができないからです。事前情報が多ければ「判断するための質問」を初回の打ち合わせでもすることができるため、商談はスムーズに進みます。ポイント⑥:失敗リスクにあえて触れるBtoB製品の導入には必ずリスクが伴います。「うちの製品なら失敗しません」という姿勢は、むしろ信頼を損なう可能性があります。理由は、導入検討者は既に様々な事例や経験から、リスクの存在を知っているからです。重要なのは、起こりうるリスクを正直に示し、その対策や予防策をきちんと提示すること。この誠実な姿勢が、逆に企業としての信頼性を高めることになります。たとえばですが、FAQなどでアンサーを用意しておくと自然な印象でリスクに対する回答ができます。「効果が出なかった場合は?」「解約した場合は?」などのアンサーを先に提示しておきましょう。ポイント⑦:コスト構造はわかりやすく「価格は個別相談」という言葉で、本当に必要な情報を隠してしまうケースがまだまだ多く見られます。確かに、案件の規模や要件によって価格は変動します。しかし、検討する側にとって予算感が見えないことは、大きなストレスとなります。なぜなら、予算の社内承認には、ある程度具体的な数字が必要だからです。「だいたいこれくらい」という目安すら示せないサービスは、そもそも検討対象から外されてしまうこともあるからです。価格の考え方や、初期費用・運用費用の内訳、オプション費用の価格帯など、可能な範囲で具体的に示していくことが、スムーズな商談につながります。まとめBtoBサイトに必要なのは、「情報の質」と「伝え方」のバランスです。必要な情報を惜しみなく、でも読みやすく提供する。課題解決の道筋を示しながら、コストや失敗リスクにも誠実に向き合う。そして何より大切なのは、検討する企業の立場に立った情報設計です。「何を知りたいのか」「どう判断するのか」。この視点を常に意識することで、商談の質は自ずと向上し、成約までの道のりもよりスムーズになっていきます。