依頼している広告代理店について、広告成果や日頃のコミュニケーションに疑問を抱き、「もっと良い代理店があるのではないか?」と考えている方は多いはずです。しかし、代理店の切り替えは考えるべきことが多く、それなりのコストを要するため、慎重な判断が必要です。本記事では、広告代理店の切り替えを検討している方に向けて、切り替えタイミングや判断基準、引き継ぎの注意点について解説していきます。切り替え前後で見落としがちな点も記載しているため、チェックリストとしてもご活用ください。こんな悩みを抱えていませんか?「成果が悪化した」「担当者の返信が遅い」「毎回同じ提案で、新鮮味がない」上記のような悩みは、広告代理店を利用する多くの企業に共通しています。私自身、多くの企業からこうしたご相談を受けており、そこには共通するパターンがあります。切り替えを検討する企業のよくある課題成果面パフォーマンスが期待を下回り続けている広告成果は良いと説明されるが、事業が上手くいっていない「なぜこの結果になったのか」「どう改善するのか」といった分析・提案が少ないコミュニケーション面連絡をしても、返信が返ってくるのが遅い担当者が頻繁に変わってしまう今どんな施策を行っているのか分からない提案品質事業特性が活かされない、汎用的な施策提案が多い外部要因の説明が多く、内部要因の分析を行ってくれない過去に結果が出なかった施策の繰り返しばかりしているこのような課題が解消されない場合、代理店の見直しを検討すべき時期といえます。ただし、切り替えを検討する前に、多くの企業が見落としがちな重要なポイントがあります。切り替え検討前の情報整備代理店を変更しても解決できない課題の場合もあるため、代理店の切り替えを検討する前に、コントロール可能/不可能な範囲を整理しておくことを推奨します。切り替え後、「思ったほど状況が改善されなかった」となる事態を避けるためにも、以下の4つの視点をチェックしてみてください。1. 成果に影響する要素2. 自社体制3. 市場の変化4. 市場での立ち位置可能であれば、自社や代理店に属していない、外部の人にもレビューしてもらいましょう。1. 成果に影響する要素広告の成果は、広告運用スキルに複数の要素が組み合わさって決まります。まず、「代理店に依頼している仕事」と「自社で対応している仕事」の役割を明確にしましょう。その上で、それぞれがどう成果に影響するかを理解すると、次の代理店にも適切な期待値を設定できます。2. 自社体制クリエイティブの制作体制や社内承認プロセスといった、自社の体制を見直しましょう。特に、オンライン集客との相性が良いECや不動産といった業界では、意思決定や実行スピードが成果に大きく影響します。事前に社内体制を整えておくことで、スピード感を持った連携が期待できます。3. 市場の変化業界全体の動向、競合他社の広告出稿、広告媒体のアップデートなど、外部環境の変化も広告成果に大きく影響します。どういった要素が・どれくらい影響していたのか、予め整理しておくことで、新しい代理店とより現実的で効果的な戦略を立てることができます。4. 市場での立ち位置価格競争力や機能性、ブランド認知度など、市場における自社の立ち位置を把握することで、効果的な広告訴求を打ち立てやすくなります。商品力に課題がある場合、商品改善にフォーカスして取り組むことで、相乗効果を期待できます。広告代理店を切り替えるべきタイミング上記の情報整備を終えたら、以下の課題が当てはまるかを確認しましょう。1つ以上当てはまる場合は、代理店切り替えの適切なタイミングと考えられます。1. 成果に対する改善提案がされない2. 対応速度に不満がある3. レポート・数字開示に不透明さを感じる4. コミュニケーションが悪化したと感じる1. 成果に対する改善提案がされない「目標CPAより◯◯%高いのですが、切り替えた方が良いですか?」と聞かれることがありますが、広告成果の数値だけでは適切な判断を下せません。重要なのは、代理店が課題を認識し、具体的な改善策を提示しているかです。目標を下回っていても、ボトルネックを特定し、仮説を立て、改善施策を実行できる代理店なら継続を検討できます。そうでない場合は切り替えを検討すべきでしょう。2. 対応速度に不満がある担当者が、自社の事業成長に対して当事者意識を持っているかどうかは、成果に直結します。そのため、返信が遅く不安を感じる場合も、代理店を切り替えるべきタイミングといえます。広告運用は、急なトラブルや市況の変化に迅速な対応が求められます。そういった状況で「対応が遅い」「連絡が取れない」といった状況が続けば、機会損失のリスクが高まるでしょう。3. レポート・数字開示に不透明さを感じるアカウントの閲覧権限が共有されていない場合も注意が必要です。近年の広告運用では、シンプルなキャンペーン構造の方が成果が出やすい傾向にあり、複雑な設定によるメリットは小さくなっています。このような状況において、ノウハウ保護を理由にアクセス権限が制限されている場合は、情報の透明性に課題があるかもしれません。また、成果に直結する指標を計測できるにも関わらず、それらと離れた指標で評価している場合も注意が必要です。実際によくあるケースは、求めている成果とは異なるアクションがコンバージョンに含まれ、実際のCPAより良い数値で共有を受けている場合が挙げられます。例:「資料請求」のみを成果としたCPAを改善したいにも関わらず、「電話番号クリック」や「問い合わせ」をコンバージョンに含めたCPAで評価しているそういった場合は、判断指標の見直しを相談してみましょう。相談してもはぐらかされる場合は、代理店の変更を推奨します。4. コミュニケーションが悪化したと感じる時間が経つにつれ、担当者の対応に変化を感じるケースがあります。その背景には、下記のような可能性が考えられます。他の業務に追われている担当者の担当案件数増加により、各社に割ける時間が減っている成果が安定しているがゆえに対応を後回しにされてしまっているまた、経験の浅い担当者が配置され、うまくコミュニケーションが取れない可能性もあります。私自身も新人時代、お客さまとのコミュニケーションがうまくいかず、クライアントからの信頼を損ねてしまった苦い経験があります。「コミュニケーションの質が落ちた」と感じた際は、対応品質の低下を率直に伝えることも有効です。それでも変わらない場合は、契約の見直しを検討してもよいでしょう。切り替え前の整理事項上記のポイントに心当たりがあり、代理店の切り替え決断した場合、「目標値と課題」「契約条件・配信状況」の2点を整理しておきましょう。これらの情報を整理しておくことで、新しい代理店への移行がスムーズになります。目標値と課題まず初めに、自社の目標値(KGIやKPI)と現状の課題を明確にすることが重要です。売上や獲得単価(CPA)、広告費用対効果(ROAS)といった指標で明確に設定し、現状との差分を把握します。また、なぜその目標が必要なのか、達成することで事業にどのような影響を与えるのかについても、あらかじめ社内で整理しておきましょう。関連記事:【広告配信を始める前に】リスティング広告の目標CPAの計算方法とは?ビジネスモデル別にわかりやすく解説!現在の契約条件・配信状況現代理店との契約条件や、広告アカウント・クリエイティブの利用権利は必ず確認しましょう。想定外の違約金が発生したり、アカウントやクリエイティブの権利が代理店側にある可能性があります。具体的には、契約や配信状況にまつわる下記ポイントを確認します。契約状況のチェックポイント契約期間と解約条件(解約予告期間、違約金の有無)手数料体系と支払条件成果物の所有権(アカウント、クリエイティブ、蓄積データ)配信状況のチェックポイント現在の配信媒体と予算配分使用中のアカウント構造設定中のターゲティング条件過去の配信実績使用中のクリエイティブ素材これらの情報を整理しておくことで、円滑に引き継ぎが進み、切り替え後の代理店が成果を出しやすい環境が整えられます。新しい代理店に切り替える際の4つのポイント次に、新しい広告代理店を選定する際のポイントを解説します。代理店の得意分野や運用方針はそれぞれ異なるため、チェックすべきポイントを事前に把握しておきましょう。ここでは、4つの重要なポイントを紹介していきます。1. マーケティング戦略の立案力2. 運用体制(分業か一気通貫か)3. 広告媒体や広告以外の対応範囲の広さ4. 担当者とのコミュニケーションコスト・頻度1. マーケティング戦略の立案力自社や顧客、市場を理解した上で提案しているかは、重要な判断基準です。具体的には、自社の強みと弱みを理解し、ターゲット顧客の行動やニーズを分析、競合の戦略を調査できる能力が求められます。また、短期的な成果だけでなく、中長期的な成長を見据えた計画を立てられることも大切です。提案内容を評価する際は、データに基づいた仮説提案ができているか、施策の優先順位が明確か、成果測定の方法が適切かなどをチェックしましょう。2. 運用体制代理店の運用体制は、サービス品質に大きく影響します。代理店の運用体制は二分化しており、営業や戦略プランナー、広告配信者が分業になっている”分業制”と、それらの工程を一人の担当者が請け負う”一気通貫制”に分かれます。 分業制一気通貫制メリット1. 企画、運用、レポート作成などの担当が分かれているため専門分野ごとの精度が高い2. 複雑な施策や多媒体での同時展開に強い1. 一人の担当者が戦略から運用までを担うため方針がぶれにくい2. 担当者の判断で迅速にPDCAを回せるため改善スピードが速いデメリット1. 担当者間の情報共有不足により戦略の一貫性に欠けるリスク2. 各担当間での確認・調整に時間がかかり、対応が遅くなる場合がある1. 担当者の力量に依存するため、スキル差が成果に直結しやすい2. 担当者の保有している案件が増えるとレスポンスが遅れることがある予算規模が大きく、複雑な事業構造や幅広い施策展開が必要な場合は分業制が向いています。逆に予算規模が小さく、一貫性のあるスピーディーなPDCAが求められる場合は一気通貫制の方が適しているでしょう。事業の特性やマーケティング予算、自社のステージを考慮して判断することが重要になります。3. 対応範囲の広さ現在の広告媒体は多様化しており、Google広告やFacebook広告だけでなく、TikTok、LinkedIn、Amazon広告など、様々な媒体が存在します。自社のターゲット顧客がどの媒体を利用しているかを踏まえ、目標に応じた手段(媒体)を選択・運用できる代理店を選ぶことが重要です。また、広告以外の対応範囲も重要な判断基準です。LP制作、SEO、コンテンツマーケティング、メールマーケティング、SNS運用など、統合的なマーケティング支援ができる代理店であれば、より網羅的な施策展開が期待できます。ただし、対応範囲が広いからといって必ずしも良いとは限りません。代理店切り替えを経験したお客さまから「対応範囲は広かったものの、各施策の相乗効果が見られず、成果も出なかった」という話を聞くこともあります。各サービスの品質レベルや、自社が本当に必要としているサービスかどうかを慎重に判断しましょう。4. コミュニケーション能力担当者のコミュニケーション能力・相性は、広告運用の成果に大きく影響します。技術的なスキルが高くても、コミュニケーションが円滑でなければ、日々の連絡がボトルネックとなり期待した成果を得づらくなります。また、日次・週次・月次でどのような報告があるのか、緊急時の連絡体制はどうなっているのかなどを明確にしておくと、期待値と実情のズレを防ぐことが出来ます。関連記事:広告代理店と良好な関係を築き、成果をあげるためのコミュニケーション方法よくあるQ&AQ1. 広告配信は月のいつから始めるべきか?推奨期間:月初1営業日から中旬月初1営業日からの開始は、月の予算管理が楽になります。中旬からの開始であれば、月初の忙しい時期を避けられるため、契約内容や配信結果を落ち着いて整理できます。非推奨期間:月末近く、木~金曜日月末近くは代理店側の業務が忙しくなる傾向があり、配信準備が行き届かない可能性があります。また、木~金に開始した場合、広告の成果を左右する初動期間が代理店の休業日(多くの代理店は土日休み)と重なってしまい、スタートダッシュに悪影響を与える恐れがあります。Q2. 配信の一時停止による影響は?広告を一時停止すると、広告経由の流入やコンバージョン数が減少します。1~2週間程度の短期停止であれば一時的な影響にとどまりますが、それ以上続くと競合他社への顧客流出リスクも高まるでしょう。また、日用品などの購買頻度が高い商品は影響を受けやすく、不動産などの検討期間が長い商品は影響を受けにくい傾向にあります。影響を最小限に抑えるには、日頃からのSEOやSNS・メールマーケティング等で接点を維持することが重要になります。Q3. 成果が出るまでにどれくらい時間がかかる?適切と思われる設定を行なっても、代理店を切り替えると1~2週間は数値が悪化します。その後正しく改善を行なっていけば、徐々に成果が現れることが多いですが、成果の現れるタイミングは事業によって異なります。購買サイクルが短い商品は成果が現れやすく、検討期間の長い商品は半年以上かかる場合もあります。配信開始から3か月程度までは、改善スピードや提案内容を通じて代理店との相性を見極めることが大切です。Q4. 予算が少ないと対応品質は変わりますか?その代理店が、比較的予算が少ない案件をどう位置付けているかが重要です。少予算の場合、新人育成の場として捉えたり、他案件との兼ね合いで対応が後回しになる場合が考えられます。その一方で、低予算から成果を出し、徐々に伸ばしていくことを前提に取り組むケースもあります。契約前の段階では「同規模予算での成功事例があるか」「最少受注額を明示しているか」「レスポンス・対応が丁寧か」を確認しておきましょう。まとめ代理店の切り替えは、事業成長を加速させるための戦略的判断として位置づけることが重要です。これまで見てきた事例では、代理店切り替えにより売上目標を3倍以上に上回った企業もありました。短期的にはコストや労力を要しますが、長期的には事業成長に好影響を与えるきっかけとなり得ます。くれぐれも慎重にご検討いただき、より良いパートナーとの出会いにつながれば幸いです。