漢字で書くことを「閉じる(とじる)」、ひらがなで書くことを「開く(ひらく)」と表現することがあります。文章においてすべての単語を漢字にする必要はありません。漢字を多用すると読みづらく、堅苦しい印象を与えることがあります。しかしひらがなやカタカナだけで構成された文章も読みにくくなってしまいます。本記事では漢字を閉じるか開くかを判断するポイントと、閉じ開きの重要性について解説します。読みやすい文章を書きたいと考えている方はぜひ参考にしてください。漢字を"閉じる"、"開く"とは?漢字を閉じるとは文言を漢字で書くことをさし、漢字を開くとは文言をひらがなで書くことをさす、ライターや編集者の間での専門用語です。漢字を閉じる、開くとはどういうことか分かりやすいように、例を挙げて説明します。漢字を閉じた場合…よろしくお願い致します漢字を開いた場合…よろしくお願いいたします上記の例のように、漢字を閉じたときは固く重い印象に、開いたときはやわらかく軽い印象にと、同じ内容であっても読み手に与える印象が若干異なります。漢字の閉じ開きはなぜ必要?漢字の閉じ開きはなぜ必要なのか、その重要性について説明します。文章の見た目のバランスを整えるため漢字の閉じ開きが重要とされる理由のひとつは、文章の見た目のバランスを整えるためです。日本語は、漢字・ひらがな・カタカナなど複数の文字を組み合わせて文章を構成します。伝えたい内容を分かりやすく表現するには、漢字を使いすぎたり、ひらがなばかりになってしまわないよう文章全体の見た目をバランス良く仕上げることが大切です。漢字とひらがなの理想のバランスは「漢字3割・ひらがな7割」と言われています。文章全体のバランスを整えるために、漢字の閉じ開きを必要に応じて行い読みやすい文章を作成しましょう。その漢字が持つ印象を植え付けないため多様な意味を持つ漢字は、文章内で伝えたい内容と漢字が持つ意味が異なる時に、読み手を混乱させてしまうことがあります。次の例を見てみましょう。色々→いろいろ(カラーを連想する)通り→とおり(道を連想する)上記の例では、漢字を開くことで読み手を混乱させることなく正しい意図を伝えられます。スムーズに読み進められるような文章を構成するためには、他の意味を連想させてしまうような漢字は開きましょう。漢字の閉じ開きの使い分け方漢字の閉じ開きの必要性について解説しました。それでは実際にどのような場面で漢字を閉じたり開いたりするのか、具体例を解説していきます。漢字の閉じ開き一覧表実際に文章を書く際にはどの漢字を閉じ開きすればよいか迷ってしまうのではないでしょうか?次の表に含まれる漢字は、基本的には開いて使用するのが好ましいとされています。「美味しい」や「事」「物」など、無意識のうちに閉じて使用してしまっている漢字も多いのではないでしょうか?これらの漢字をひらがなで記載するだけでで読みやすい文章になります。普段から意識して漢字を開いてみましょう。補助動詞は開く先ほど紹介した言葉以外にも、品詞の種類によって開くか閉じるかを判断する場合もあります。たとえば「お支払いいただきます」「お越しいただきます」などのように、前で述べている動詞の補助動詞として「いただきます」が使われている場合は、「頂きます」のように漢字で記載せず開くようにします。反対に「お金を頂きます」のように、「頂く」行為が動詞になっている場合は閉じて記載します。補助動詞の場合は開く、動詞の場合は閉じると覚えておくと文章を書く際に迷いにくくなるので便利です。形容詞・形式名詞は開く品詞の中でも、形容詞と形式名詞は開くことが一般的です。大手出版社のひとつである三省堂のサイトでは、「ひらがなで書いた方が良い単語」として次の例をあげています。副詞・接続詞は開く品詞の中で、副詞と接続詞も開くことが一般的です。次の表で一例を見てみましょう。当て字は開く次のような当て字は、一般的に開くのが望ましいと言われています。ありがとうございます(有難う御座います)めでたい(目出度い)はやり(流行り)うまい(上手い)複合動詞は開く2つ以上の単語が組み合わさってできた複合動詞も、開くことが一般的です。一例を見てみましょう。走りつづける(走り続ける)見わたす(見渡す)歩きまわる(歩き回る)食べつづける(食べ続ける)複合動詞では、読みやすくするためにどちらかの動詞を開きますが、後ろの動詞を開くのが一般的です。常用漢字表にない漢字は開く文化庁では、常用漢字を次のように定義しています。一般の社会生活において現代の国語を書き表すための漢字使用の目安引用:常用漢字表(平成22年内閣告示第2号) - 文化庁常用漢字表は、上記に該当する漢字を表にまとめたものです。日頃使っている漢字でも、次の表のように常用漢字表にない漢字や音訓は、開くようにしましょう。漢字の閉じ開きを使いこなす方法ライターの方や人に伝えるために分かりやすい文章を書く必要のある方のために、漢字の閉じ開きを使いこなす方法をまとめました。文章を書く際の参考にしていただければ幸いです。「記者ハンドブック」をライティングのおともにする記者ハンドブックは、仕事で文章を書く全ての人に向けて、分かりやすく優しい文章が書けるようになることを目的とし共同通信社が発行している書籍です。特に次の疑問を解決するのに役立ちます。漢字とひらがなどちらを使うのがふさわしいかどの漢字を使うのがふさわしいか送り仮名はどうつけたら良いのか同音異義語を使い分ける基準とはほかにも誤りやすい語句や外来語なども掲載されており、ライティングのおともとして1冊持っていると参考になります。文章校正ツールを使って表記ゆれを防ぐ表記ゆれとは、文章の中で同じ語句について複数の表記が混ざってしまっていることをさします。具体的には、次のケースが表記ゆれと呼ばれます。数字と漢数字の混在(「2」「二」など)送り仮名の違い(「取扱」「取扱い」「取り扱い」など)送り仮名の違いによる表記ゆれは頻繁おこりがちです。意図的に表記ゆれが起こることは少いので、文章中に表記ゆれがあるとミスのひとつと認識されてしまいます。表記ゆれを防ぐためには、ツールの活用が効果的です。文章校正ツールのひとつである「文賢」には、漢字ルールとフリールールという機能が備わっています。漢字ルールは、漢字からひらがな・ひらがなから漢字と、それぞれのルールを一覧表にしてツールに取り込んでおくと、一発でチェックできます。また文脈によって判断に迷う単語は、フリールールというタブに登録し、指摘が出たらひとつずつ目視でチェックしていきます。文賢は有料ツールですが無料のツールもありますのでそちらも合わせて紹介いたします。「文章校正ツール」は文賢ほど多様な機能はありませんが無料で利用できます。またIME(日本語入力システム)の機能を活用し、システムに漢字変換のクセを学習させることで、使用頻度が高い変換を優先的に表示することも可能です。これらのツールや機能を活用することで表記ゆれを防げるようになります。ぜひ活用を検討してみてください。出版社やメディアの表記ルールを優先する特にWebライターが文章を執筆する際には、出版社やメディアから表記ルールやマニュアル、レギュレーションなどの提示を受けます。メディアの意図や方針などによって、閉じる・開くの基準が異なる場合もありますが、基本的にはメディアの指示に従って執筆し、納品前に必ずチェックしましょう。自分でも読み直してテンポの悪いところを開く文章の執筆が完了したら、自分でもう一度読み直してみましょう。読みにくい・テンポが悪いなどと感じた部分は、閉じ開きが合っていたとしても直してみることが大切です。自分の中で閉じ開きのルールを決めてみるのも、読みやすい文章を書くために効果的な手段です。さいごに人に伝える文章を書く人にとって、漢字の閉じ開きは文章の内容を読み手に正確に伝え、分かりやすく読んでもらうためにとても重要な知識です。本記事で解説した内容を参考にし、文章の読みやすさを向上させていきましょう。関連記事:顧客目線のブログとSEO対策で、7.7倍のリードを獲得できるまで伸びた医療ブログの改善事例