Web広告の運用を続けていると、成果に頭打ちを感じ始めるタイミングがあると思います。キーワードの精査や広告文のPDCAを回しているのに、お問い合わせ数が伸びない。おそらく、多くの方が向き合ったことのある課題ではないでしょうか。今回は、同様の課題を抱えていた労務・バックオフィス代行事業を営んでいるクライアントの、Web広告経由でのお問い合わせ数増加に向けた検証について解説いたします。新たに広告の遷移先ページ(以下、ランディングページ)を作成して、仮説の立案と実証を行いました。注意:以下の事例は私たちの状況に基づくもので、全てのケースに当てはまるわけではありません。訴求を絞ったページを作成して、お問い合わせを増やしたWeb広告の改善事例もともと、他の広告代理店でGoogle広告を配信していましたが、思うような結果が出ず、ご相談をいただきました。前提と課題クライアントが提供しているサービスは、企業の労務・バックオフィス業務の代行支援です。給与計算や社会保険手続き、年末調整など、企業のバックオフィス業務を幅広く代行されており、サービス範囲は多岐にわたります。業種労務・バックオフィス代行事業コンバージョン地点資料請求・お問い合わせ対象とする施策Google検索広告課題広告配信を始めて3ヶ月、広告の調整を進めているものの、お問い合わせ数が増えないWeb集客施策として、Google広告を配信していました。お客様のニーズごとに広告グループを3つ作成し、広告配信をスタート。3ヶ月間、キーワードの精査やクリック単価の改善など、様々な検証を行ってきましたが、お問い合わせ数の伸びに頭打ちを感じていました。今回は、この課題に対する仮説から実施施策、検証結果までの過程をご紹介します。課題に対する仮説広告の調整以外に、GA4とヒートマップツールを使ってランディングページの分析も合わせて行っていました。この結果から分かったことも踏まえて、以下の仮説を立てました。ページ冒頭のサービスの手広さの訴求が、離脱原因になっていたランディングページの分析で参考にしたのは、以下のデータです。GA4の「平均エンゲージメント時間(≒そのページを読んでいた時間)」ヒートマップでの離脱率や離脱ポイントこのデータから、「ページを読んでいる平均時間が短く、ページの上の方で離脱されるケースが多い」ということがわかりました。そのため、ランディングページに流入してくる方のニーズとファーストビュー(ページを訪問した方が最初に見る画面)のメッセージがずれているかもしれないと考えました。そこで、現状のランディングページのメッセージを再度見直して、ずれが発生している場所を分析。その結果、給与計算や社会保険手続きなど、多くのニーズに対応するサービスであるがゆえに、どのニーズに対してもメッセージが弱いものになっていると仮説を立てました。検索広告で流入してくる方は、解決したい具体的な悩みを抱えています。そこに「色々なことができます」と伝えても、「自分の悩みが解決できるかはわからない」で止まってしまう。サービスの手広さは、クライアントの強みですが、ページの最初にその訴求があることで、逆にユーザーの離脱につながっている可能性がありました。課題に対して行った施策上記の仮説をもとに、ランディングページを以下の2つのポイントを考慮しながら変更しましたランディングページ上部の訴求内容を1つのテーマに絞るまず考えたのは、どのお困りごとに対するランディングページを作るのか、です。広告配信前の調査段階で、ペルソナ(※)には複数の悩みごとがあると分析していました。毎月の給与計算をどう回すか。社会保険の手続きを誰が対応するか。年末調整の繁忙期をどう乗り切るかなど、どれも切実な悩みごとです。それぞれの悩みに対するページを、一気に作れれば理想的です。ただ、リソースには限りがあるため、どのページから作るのか、優先順位をつけることが重要でした。そこで、クライアントにお時間をいただき、以下の点をヒアリングしました。過去のデータから、どのような悩みを持った方からのお問い合わせが多いのかサービスに魅力を感じていただきやすいのは、どの悩みから入ってくる方かクライアントからは、以下の回答をいただき、給与計算代行を訴求するページを優先して作成することになりました。「問い合わせのきっかけとして、給与計算は最も多い」「給与計算から入ってくる企業は、規模も経験もばらばらで、層が広い」「給与計算から入った企業に『その他の業務も対応できる』と伝えると、関心を持ってもらいやすい」このヒアリング内容から以下のように、ファーストビューの訴求内容を変更しました。変更前:例)企業のバックオフィス業務を総合サポート変更後:例)毎月の給与計算をワンストップで代行※ペルソナとは、サービスや商品を利用する人物(顧客)の特徴を持った個人のイメージ像のことこれまで打ち出していた強みは、ページの後半に掲載する訴求を絞る時に迷ったのが、クライアントの強みであるサービスの手広さをどこに掲載するかという点です。「給与計算に強い」のみの訴求では、競合との差別化をつけにくかったため、クライアント独自の強みをどこかに入れたいと考えていました。この点についてもお客様と打ち合わせた上で、以下の二部構成にすることとなりました。前半:給与計算代行に特化した内容。ファーストビュー、強み、課題提起、解決策まで、すべて給与計算の話で揃える。後半:給与計算に加えて、多数のサービスを提供できる点を説明する。前半で「給与計算なら、ここに任せられそうだ」と感じてもらい、後半を読み、「他のことも相談できるのか」と知ってもらう。1つの顧客ニーズをフックにして、自社に魅力を感じてもらえるページ構成にしました。施策から得られた結果上記施策をおこなった前後の月次のコンバージョン率、コンバージョン数を比較してみました。下の表が実際のデータですが、いずれの指標も大きく改善しています。項目変更前変更後コンバージョン率1.87%2.87%コンバージョン数7件/月16件/月コンバージョン単価28,435円21,779円※コンバージョン数:資料請求数+お問い合わせ数 コンバージョン率:(資料請求数+お問い合わせ数)÷ 広告のクリック数 コンバージョン単価:広告費用 ÷(資料請求数+お問い合わせ数)広告費用は1.75倍ほど増額していますが、コンバージョン数は、広告費用の増分割合を上回る約2.3倍に。その他、コンバージョン率、コンバージョン単価も改善が見られました。さらに、ヒートマップを確認したところ、ページ中盤までの読了率が約20pt向上していました。ページ上部で離脱せずに、興味を持ってLPを読み進めてもらえるようになったことが伺えます。得られたデータを基にした考察あくまで今回のケースでの結果のため、すべてのケースに当てはまるわけではないですが、上記のような結果となりました。この結果をもとに以下のように考察しました。ファーストビューでいかに自分ごと化してもらえるかが重要今回、ファーストビューで訴求する内容を絞り、誰のどんな悩みを解決できるのかを、最初に明確にしたことで、同じ悩みを持っている方に自分ごと化してもらいやすくなりました。その結果、サービス内容に魅力を感じていただけるようになり、お問い合わせ数の増加につながったと考えられます。少しでも「ここに自分が求める情報はない」と判断されると、ページの内容を読んでもらう以前に、離脱されてしまいます。ファーストビューでいかに自分ごと化してもらうかが、結果の成否を分けると言えそうです。課題の理解が曖昧だと、その後のメッセージもぼやけてしまうコンバージョン率を上げるためには、課題提起から始まり、解決策、それができる根拠、そして強みという流れが一貫していることが重要です。この流れの中でどこかで別の話が混ざると、冒頭で自分ごと化したはずが、読み進める理由がなくなってしまうからです。その上で、この一貫性を保てるかどうかは、課題をどれだけ解像度高く理解し、整理できているかで決まります。お客様が何に悩んでいるのか、その悩みはなぜ生まれたのかといった背景を具体的に把握することで、ページの流れに一貫性が生まれます。そして、課題を明確に把握するためには、広告の管理画面や定量データの向こうにいる「人」に目を向ける必要があります。営業担当の方にヒアリングする。過去のお客様へのインタビューがあれば徹底的に読み込む。そういった活動を通して、お客様の行動や心理を考え抜くことで、課題を明確に捉えることができます。さいごに今回の改善は、広告の調整から離れて「このページで、誰の悩みを解決しようとしているのか」を考え直したことから始まりました。その悩みをどこまで具体的に捉えられるかで、ページの内容は変わります。悩みが明確に理解できていれば、ファーストビューで何を伝えるべきかが決まり、その後に続く解決策や強みに一貫性が出てきます。反対に課題が曖昧なままだと、伝えたいことが増え、結果として誰にも届かないページになってしまいます。ただし、管理画面の数字を眺めているだけでは、そこまでの解像度は上がりにくいと思います。今回であれば、クライアントへのヒアリングを通して現場の話を伺えたことが、訴求を絞り、顧客の課題への理解を深めることにつながりました。広告の結果に頭打ちを感じている方の、少しでも参考になれば幸いです。