インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングの違いは、見込み顧客を惹きつけるためのアプローチ方法による違いといえます。たとえば、Google広告などを始めとするWeb広告は、ターゲティング精度の高さからインバウンドマーケティングの施策として利用することができます。しかし、見込み顧客の課題や行動を考慮しない広告施策として活用した場合、アウトバウンドマーケティングとしての施策となる、と筆者は考えます。このようにインバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングは施策によって分けられるものではなく、その使い方や顧客へのアプローチ方法によって分けられるものです。インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングの違いインバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングは、それぞれ異なるアプローチで顧客を引き付けるマーケティング手法です。インバウンドマーケティングは、見込み客の困り事や悩みに対し、それらの解消につながるようなコンテンツを、適切なタイミングに提供することで、顧客の関心を引きます。その後、継続的な情報提供やコミュニケーションを続けることで、信頼関係を構築していくことを目指します。つまり、顧客のニーズに合わせたプル型のマーケティング手法です。他方でアウトバウンドマーケティングは、見込み顧客の都合を深く考慮せず、企業が伝えたいメッセージやタイミングで、顧客に迫る手法のことです。つまり、顧客の企業主体のプッシュ型のマーケティング手法と言えます。インバウンドマーケティングアウトバウンドマーケティング成果が出るまでの期間一般的には、アウトバウンドマーケティングに比べて、時間がかかる一般的には、インバウンドマーケティングに比べて、即効性がある費用無料の施策を活用できるため、アウトバウンドマーケティングに比べ、少額予算から始めることができる大規模な施策が必要となるため、インバウンドマーケティングに比べて、大きな予算が必要営業効率顧客からお問い合わせされたものに対応するので、効率が良い顧客と半ば無理矢理に商談の機会を設けるので、効率が悪いターゲティング個人の行動や悩みに合わせるため狭範囲多数の潜在顧客に認知される必要があるため広範囲顧客からの印象顧客の情報探索行動に合わせてメッセージを届けるため、ネガティブな印象を抱かれる可能性は低い顧客のタイミングや行動を深く考慮せずメッセージを届けるため、ネガティブな印象を抱かれる可能性がある「期間」で比較する一般的にはアウトバウンドマーケティングの方が即効性があります。なぜならインバウンドマーケティングは、困り事や悩みを持つ見込み顧客と接点を持ち、信頼関係を構築し、自社の製品やサービスを利用していただくことで、さらに大きな顧客の目的・目標の達成を支援するものです。接点作りから、信頼関係の構築、製品・サービスの購入までには、やはりそれなりの時間がかかってしまいます。対してアウトバウンドマーケティングは、企業にとって都合の良いタイミングで顧客に迫ります。見込み顧客がまだ興味を示していない段階でも、接点を作り、製品・サービスの購入に向けてアプローチするため、効果が出るまでの期間は、インバウンドマーケティングよりは短期間で効果が出ることが多いです。「コスト」で比較するインバウンドマーケティングは大きな費用が必要なわけではありません。HP制作、SNSの運用、記事コンテンツの制作などは、ほぼお金をかけずに実行することができます。しかし社内にノウハウがない場合、これらはアウトソーシングすることができます。もちろん費用はかかりますが、短期的に成果を実感できるはずです。しかし上述の通り、原則、インバウンドマーケティングには長期的な投資が必要になります。そのため月々の費用はそれほどでも、成果が出はじめるまでには時間がかかり、合計するとそれなりの費用が必要になるため注意が必要です。マーケティング予算が潤沢でない企業でも、コスト的に始めやすいのが、インバウンドマーケティングの特徴です。反対にアウトバウンドマーケティングは、「テレビCM」「テレアポ」「ダイレクトメール」など、大きな費用がかかる施策が中心となります。大多数の人にメッセージを届け、関心を持ってもらう必要があるためです。「営業効率」で比較するリード(お問い合わせや資料請求)を獲得してから、営業担当者がアポ取りをし、営業活動を行います。インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングは、リード獲得から受注までの営業プロセスでも大きな差が生まれることが多く、一般的にはインバウンドマーケティングの方が、営業効率(※)がいい、と言われます。(※)営業効率は、「営業活動に費やした時間や費用(投入リソース)によって、どれだけの売上を獲得できたかの度合い」のことを指します。言い換えると「投入リソースあたりの売上」です。引用:営業効率(生産性)を計算するためには - セールスハック私たちがクライアントにご支援をしていく中でも、インバウンドマーケティング経由で獲得したお問い合わせの方が、その後スムーズに受注までにつながることが多いです。アウトバウンドマーケティングは、見込み顧客にメッセージを届け、半ば無理矢理に関心を持ってもらい、営業活動を行います。対してインバウンドマーケティングは、信頼関係を築けている顧客から獲得したお問い合わせに対して、営業活動を行うものです。どちらが営業効率が高いかは、考えるまでもないでしょう。「ターゲティング」で比較するインバウンドマーケティングはパーソナライズドなアプローチが可能で、アウトバウンドマーケティングは広範囲にリーチします。インバウンドマーケティングは顧客一人一人のニーズや興味に基づいてアプローチします。その結果、顧客の信頼を獲得し、長期的な関係を築くことができます。一方で、アウトバウンドマーケティングではより広範囲にリーチすることを目的とします。短期間で多数の潜在顧客に認知される必要があるため、マス広告をはじめとした大規模な施策に頼る必要があります。しかし、その分、特定のニーズに応えることが難しく、一人一人の顧客との深い関係を築くことが難しい場合があります。どんな商材・業種が向いているか?一概に商材・業種で、マーケティング手法の向き不向きを決めることはできません。ですが、見込み顧客が情報を探すようなアクションを取っている場合、インバウンドマーケティングは非常に効果的な手段になるはずです。また、自社に十分な営業人材がいない場合や、予算が潤沢でない場合でも始めやすいのがインバウンドマーケティングです。しかしスタートアップや大企業のように、マーケティング予算が潤沢にあり、短期間での大きな成長を目指す場合は、アウトバウンドマーケティングも非常に有効な手段となります。自社の状況や思想・文化に合わせて、手法は変える、または組み合わせるのがいいでしょう。また当社のお客様でインバウンドマーケティングをご支援した事例があります。こちらも併せてご覧ください。事例. 株式会社ライフテック様(建材メーカー)株式会社ライフテック様は、工場や倉庫の屋根に使用する建材を扱うメーカーです。当初は、ご予算や採用の課題もあり、なるべく予算をかけずリードを獲得し、少数精鋭の営業人材で受注につなげること(アウトバウンドではなく、インバウンドマーケティングでのリード獲得)を目指しました。弊社とのインバウンドマーケティングの取り組みの最初に、顧客の悩みや行動の仮説を洗い出し、それに沿ったコンテンツ作り、コンテンツ伝達手段を考えました。その結果、1年で売上は約2倍に成長、お問い合わせ数も約3倍となりました。お客様インタビュー:「ニッチ商品でも、知恵を絞ればマーケティングで成果を出せる」予想外の提案から始まり、売上が2倍以上に伸びた取り組みまとめインバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングの違いは、見込み顧客を惹きつけるためのアプローチ方法による違いといえます。顧客の情報探索の行動に沿って、コンテンツを作り、アプローチするインバウンドマーケティング。それに対して、企業側のタイミングで顧客にアプローチを図るのがアウトバウンドマーケティングです。どちらかが正解というものではないので、企業の状況や思想・文化に合わせて、一方を実施したり、または組み合わせることが重要でしょう。大切なことは、自社の利益だけでなく、見込み顧客から既存顧客までの利益を考えながら、マーケティングを考えることではないでしょうか。