「卵は一つのカゴに盛るな」この言葉は、投資の世界でよく使われる格言です。特定の銘柄だけに投資をするのではなく、複数の商品に投資をし、リスク分散をさせた方が良いという考え方です。この言葉を使ったのは、集客においても同じことが言えると考えているからです。スタートアップ企業や中小企業など、リソースに限りがある場合、ひとつの集客経路に集中してポジションを取るというのは正しい戦略です。しかし、テクノロジーの進化やライフスタイルの変化により、これまで安定していた集客経路も突如パフォーマンスが悪化したり、ほとんどの集客ができなくなるケースも存在します。このように変化が激しい状況下では、複数の経路から集客できる基盤を作り、リスクを低減させつつ集客を増やすこと。つまり攻防一体の集客経路の分散が、継続的な成長において大切だと私は考えます。本記事では、実際に集客経路を増やすことに成功した事例をもとに、集客経路拡大のポイントについて解説します。今の施策で集客が伸び悩んでいる方に参考になれば幸いです。集客経路を増やすことが大切な理由集客経路を増やしておくことが大切な3つの理由について解説します。媒体の動きによってすべて覆ってしまう可能性があるため媒体によってアプローチできる層が違うため獲得単価の高騰を防ぐため媒体の動きによってすべて覆ってしまう可能性があるためとくにWeb媒体は変化が激しく、媒体を運営している会社の動きひとつで状況が一気に変わります。たとえば「Google 広告の仕様が変わりパフォーマンスが急落した」「Google検索エンジンのアップデートによりブログからの集客が0になってしまった」というのはよく聞く話です。SNSやポータルサイトなども同じように、運営元の動きによってパフォーマンスが変わります。最近ではイーロン・マスクがTwitter社を買収し、実質的な支配者となりました。その後、イーロンの一言によりTwitterの仕様が変わり、Twitter広告から撤退した企業も少なくありません。ひとつの媒体で集客ができていても、外部要因によって大きく左右されてしまうため、早い段階から集客経路を増やしておく必要があるといえます。媒体によってアプローチできる層が違うため媒体によってアプローチできるユーザーは異なってきます。新聞、ラジオ、テレビなどのマスメディアと、InstagramやTikTokなどのSNS媒体とでは、利用している年齢層が違うことは想像しやすいと思います。それだけでなく性別や趣味、ユーザーが求めている情報など、さまざまな部分に違いがあります。媒体を広げることによって、商品を求めている新しい顧客と接点を持てるようになるかもしれません。ひとつの集客経路に依存するということは、そういった見えない機会損失をしているという可能性もあり得ますので注意が必要です。顧客獲得単価の高騰を防ぐため顧客獲得単価とは、1件のお問い合わせや購入、会員登録などのアクションを獲得するためにかかった費用を算出したものです。マーケティングにおいてはとても重要な指標で、それぞれの施策における費用対効果をあらわす際に用いられます。この獲得単価は、同じ媒体に競合が増えれば増えるほど上がる傾向にあります。100万円をかけて10件の顧客を獲得できていても、競合が増えたことにより5件しか獲得できなくなれば、同じ予算をかけている場合、獲得単価は10万円から倍の20万円に跳ね上がります。そのような競争を続けていると、資金の戦いになってくるため、なるべく避けた方が良いでしょう。コミットする媒体を複数持ち、戦う場所や手段を増やしておくも戦略のひとつです。集客チャネル拡大に成功した事例下の図は、弊社が支援しているクライアントの集客経路を示したポートフォリオです。左が集客経路を増やす前のもの、右の図が集客経路を増やしたあとのポートフォリオです。左側の集客経路は、ほとんどがWeb広告になっています。この状況から伺えるのは「広告が停止したら8割の集客が止まる」というリスクです。媒体の仕様変更といった外部要因、広告予算が枯渇するという内部要因などで停止せざるを得ない場合、集客の8割が止まってしまうハイリスクな状態と言えます。一方、右の図ではWeb広告による集客が16.7%になっており、InstagramやYouTubuなどのSNS経由やGoogle検索からの集客もできています。1つの経路に依存していないため、1つの経路が機能しなくなった場合でも大幅な損失を防ぐことができます。短期の集客施策と中長期を見据えた種まきを並行して行う集客経路を増やすことは簡単ではありません。上記の例においても集客経路を分散させるために2年以上の歳月を費やしており、その間も地道な努力をした上で新たな集客の軸が出来上がっています。しかし事業を運営している以上、既存の集客施策を止めて、0から新たに集客経路を作るという時間の猶予はありません。そのため”短期の集客施策を行いながら、中期を見据えた集客施策の種まき”をすることが重要になります。たとえば先の例では、目先の集客においてはリスティング広告で獲得し、その間に中期を見据えてブログ更新、Instagramの発信を続けていました。ブログやSNSで集客を成功させるためには、どれだけ頑張っても半年~1年以上はかかります。その間の集客は、即効性の高いリスティング広告で補完しながら、徐々に広告費を減らしていく戦略をとっています。集客経路を増やす際のポイント集客経路を増やすためのポイントを解説します。相性の良い媒体を選ぶ集客経路を拡大するために、どの経路や媒体を拡大していくべきか悩むと思います。そこで選定基準として「媒体(≒集客経路)との相性の良し悪し、を加味して選定する」ことをオススメします。「商品」と媒体の相性「顧客」と媒体の相性「自社組織」と媒体の相性自社の商品、顧客、自社組織それぞれの特性を分析した上で、媒体との相性を判断します。「商品」と媒体の相性まず商品と媒体の相性を考えます。この時、商品の魅力をその媒体で伝えられるかどうかを考えます。たとえばファッション系の商品においては、テキストがメインのブログやTwitterでは存分に魅力を伝えきれない可能性もあります。一方で、InstagramやPinterestのような画像中心の媒体であれば、より視覚的に伝わる表現で、独自の魅力を伝えられます。このように”商品の魅力を最大限伝えられる手段”を考えた上で、媒体との相性をみていきます。「顧客」と媒体の相性“顧客が普段の生活の中で、頻繁に見ている媒体かどうか“という視点も重要です。せっかく魅力的な発信を続けていても顧客となりうる人が利用しない媒体であれば、顧客と接点を持つことは難しくなります。顧客と媒体の相性を確かめる方法は、ターゲットの年齢層や性別などのデモグラフィック情報を明らかにして、そのターゲットがよく利用している媒体を調査します。実際に訪れた顧客にヒアリング調査をしてみても良いでしょう。「自社組織」と媒体の相性見落としがちなポイントですが、媒体を選ぶ際は、自社組織との相性も考慮しましょう。自社内でマーケティングを行う場合、実際に行うメンバーの特性や企業文化も視野に入れながら考えます。たとえばYouTubeのような動画サイトと商品の相性が良いからといって、話すことが苦手なメンバーや表に出たくないメンバーに対して無理やり行うことはオススメしません。SNSなどで集客に繋げるためには、ある程度の継続が必要です。イヤイヤおこなっていれば途中で折れて断念せざるを得なくなります。そうならないためにも、実行するメンバーの特性にあった媒体を選ぶことも集客を成功するためにかかせないポイントです。中長期を見据える集客経路を増やすためには、中長期を見据えた戦略を取ることが必要です。もちろんWeb広告やダイレクトメールなどの施策で、既に問題なくコンスタントに集客ができている場合はその限りではなく、むしろ短期的な施策改善を繰り返すことが大切です。しかし、限られたリソースの中で集客経路を増やし、安定した集客基盤を作りながら、集客数を増やしたい、と考えている企業は中長期を見据えた投資が必要になります。以下の図はSNSフォロワー増加のイメージになります。縦軸がフォロワーや横軸が時間です。図のようにフォロワー数を伸ばしていくには、ある程度時間がかかります。そしてフォロワー数やユーザー数は通過点でしかなく、その後の工夫次第でようやく顧客獲得に繋がっていきます。ブログやSNSで集客を成功させるためには、中期長的な視野を持ちながら地道な積み重ねが必要です。分散をさせすぎないここまでの解説とは少し逆説的になりますが、分散をさせすぎないということも重要な観点です。集客経路を増やす場合、1つひとつの施策に時間と労力が必要です。そのため、あまりに一気に分散させすぎると、それぞれの施策で効果がでるまでの時間も伸びてしまいます。たとえば、ブログで集客を成功させている企業の多くはかなりの記事数を公開しており、数記事の公開で集客につなげているのは稀でしょう。毎月コンスタントに良質な記事を更新することで、少しずつ認知が広まり検索経由やSNS経由で読者が増えていきます。ブログ更新に取り組んでいる中で更に、SNS運用や外部メディアへの寄稿などの施策にも取り組んでしまうと、全施策の進行が遅れてしまう可能性があります。資金や人材などのリソースが潤沢にある場合はその限りではないですが、リソースに限りがある場合は”選択と集中”が必要です。さいごに良い商品を作るだけで売れる時代では無いため、多くの企業が「良い商品を作った後に、それをどう顧客に伝えるか?」に力をいれています。その結果もあり、マーケティング施策ひとつひとつの難易度は高まっており、高い費用対効果を実現するのは簡単ではありません。集客経路はただ増やせば良いのではなく、商品との相性や、中長期の戦略なども踏まえて選択し、丁寧に増やしていかなければいけません。冒頭にも書きましたが、事業の創業直後はひとつの集客経路の中で圧倒的な認知を取り伸ばすべきと考えますが、その後は適度に分散させていくことが継続的な事業成長のためには必須になります。「自社の集客経路が一つのカゴに盛られてないか?」この記事がそれを確認するきっかけになると嬉しいです。