住宅は人々の生活に大きく関わるため、建物の安全性や取引に関する安全性を守る必要があります。そのため、契約や建築にまつわるルールや法律は多く、取引前の広告に関するルールや規制などもたくさんあります。賃貸や売買など住宅に関する集客は、過去にはSUUMOを初めとするポータルサイトが中心でしたが、InstagramやTikToKなどインターネットによる集客方法の選択肢が広がりました。住宅に関する広告の規制やルールは、ポータルサイトやチラシだけでなく、SNSやホームページにも及びます。知らずに違反してしまうと思わぬ罰則や規制が入る可能性があるので、本記事でしっかり抑えておきましょう。不動産広告に関する主な規定について住宅関連事業の広告(以下、不動産広告と呼ぶ)を行う際には、いくつか法律を守る必要があります。そして、不動産関連の広告においては「宅地建物取引業法」「景品表示法」「不動産の表示に関する公正競争規約」の3つの法律を遵守することが必要です。ここからはどのような規制があるのか、それぞれの法律から詳しく解説します。宅地建物取引業法宅地建物取引業法とは、宅建業を営む業者や個人における土地、建物の取引ルールを定めた法律です。契約に関するルールや、手付金や免許に関する事項から、広告のルールが決められています。たとえば、建物の建築に関する工事の完了前においては、開発許可や建築確認という手続きを経た後でなければ広告の配信はできません。他にも表示すべき項目が決められていたり、用語の基準が設けられています。参考:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会 - ハトマークサイト景品表示法景品表示法の正式名称は、不当景品類及び不当表示防止法といい、過大な宣伝・広告や不当に高額な景品の贈呈などを規制するための法律です。商品やサービスなど購入する消費者を守るために不当な広告を制限する法律で、不動産に限らず、すべの商品やサービスが対象となる法律です。たとえば、すでに成約されて販売不可能になっている物件に関する広告を配信してお客さんを呼ぶ、いわゆる「おとり広告」も景品表示法違反に該当します。画像引用: おとり広告の規制を理解する - 公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会不動産公正競争規約不動産の公正競争規約は、不動産業界が自主的に定める不動産広告のル-ルです。不動産広告に表示しなければならない事項などが定められており、もしルール違反した場合は、不動産公正取引協議会が警告や違約金課徴などの措置をとり広告の是正を行います。それだけではなく、処分権者が不動産公正取引協議会であるため「ポータルサイト掲載停⽌」という独自の処分がくだされることもあります。参考:公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会不動産広告の各規定に違反した場合のペナルティ不動産広告に関する広告は、3つの法律で規制されているということを解説しました。そしてその法律を違反した場合、それぞれどのような罰則があるのか見ていきます。宅建業法のペナルティ宅建業法の不動産広告規制に違反をした場合は、国⼟交通省、都道府県が必要な処分を下します。違反した場合の処分は、違反した内容や重さによって罰則も変わります。たとえば、広告の差し止めや改善命令を下す指示処分、期間を定めて業務を行うことを禁止する業務停止処分、とくに情状が特に重いときは免許取消しという処分を受けることがあります。それだけでなく、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金の定めもあります(同法第81条第1号)。誇大広告禁止の規定に違反をして誇大広告をした場合の罰則は、監督処分として業務停止処分、罰則として6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられることがあります。景表法のペナルティ景表法を違反し場合は、消費者庁、公正取引委員会、都道府県が必要な処分を下します。違反した場合は、ペナルティは大きく次の3つに分けられます。それぞれ解説をします。画像引用元:景品表示法違反被疑事件の調査の手順 - 消費者庁指導・指示・注意等今後違反につながる疑いがある場合には、消費者庁等はまず必要な調査を行います。現段階では著しく誤認するような広告ではない場合でも、内容によっては「指導」や「注意」の対象となることがあります。措置命令(売上額が5,000万円未満の場合)措置命令とは、「違反行為の差止め」や「再発防止策の策定」のことをいいます。この措置を講じられると、消費者庁のサイトに企業名や違法行為が掲載されるための、企業は信頼を損失する可能性が高まります。課徴金措置「不当表示規制」に違反したときは、課徴金納付命令に付されます。つまり国に対してお金を支払わなければならないのです。具体的には、違反する広告(表示)を出していた期間に「違反表示に関して得た売上の3%」と定められています。しかし、違反行為から生じた売上額が5,000万円未満(課徴金額が150万円未満)であるなら課徴金納付命令ではなく措置命令のみが課されます。不動産公正競争規約のペナルティ不動産公正競争規約に違反した場合は、不動産公正取引協議会が必要な処分を下します。不動産公正競争規約に違反した場合は、50万円以下の違約金と公正取引協議会から警告を受ける可能性があるほか、2回目以降は、最大500万円の違約金が課されることがあります。これは、違反回数に応じて重くなっていくわけではなく、内容によっても罰則は変化するのと、初めての違反でも違約金の対象となる可能性があります。参考:【判例】2019年9⽉ 度措置 埼玉県知事免許 - 公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会Web広告において気をつけるべき点冒頭にも申し上げた通り、ここまで解説した規制やルールはチラシ、ポータルサイトだけでなく、Web広告や自社のホームページまで関係があります。Web広告およびホームページを使った集客において特に気をつけるべき制限を3つ解説します。広告開始時期の制限不動産広告は、広告を開始する時期についても気をつけなければいけません。たとえば、まだ完成してないマンションを広告するには「建築確認」という必要な手続きを取得したあとでなければ、広告をすることができません。もしこれを違反した場合は、宅建業法に違反し、監督処分として指示処分を受けることがあります。新たに造成する宅地を広告する場合は、「開発許可」という必要な認可が降りたあとでなければ広告を開始することができません。またこれらの広告は「販売予定」「開発許可の申請中」という表示をいれたとしても行うことはできないので注意が必要です。つまり、宅建業者は未完成物件について、建築などに必要な許可や確認が得られて、売ることができると確認されたあとでなければ、広告や契約をすることができません。表示基準不動産の表示に関する公正競争規約施行規則5章表示基準の第10条では、物件の内容や取引条件などに関わる表示基準が明記されています。表示が必要になる主な項目類型広告の表示内容取引態様売主や貸主、代理、媒介などはこれらの用語を使って表示すること。物件の所在地都道府県、 郡、市区町村、字及び地番を表示すること。交通の利便性最寄り駅もしくは最寄りの停留所の名称および徒歩所要時間を表示すること。各種施設までの距離または所要時間道路の距離は、物件と各種施設の起点と着点を明示し、表示すること。徒歩の所要時間は1分/道路距離80m、1分未満の秒数は切り上げ表示をすること。面積土地の面積はメートル法で表示し、1㎡未満の数値は切り捨て表示をすることができる。団地の規模開発区域を工区に分けて工区ごとに開発許可を受け、当該開発許可に係る工区内の宅地又は建物 について表示をするときは、開発区域全体の規模及びその開発計画の概要を表示すること。物件の形質居室として認められない納戸、その他の部分については、納戸と明示し、地目は登記地目を表示すること。写真・絵図写真は取引するものの写真を表示すること。ただし、未完成の建物の場合は、一定の要件を満たしている完成予想図などであれば表示することができる。設備・施設等水道は公営水道・施設水道もしくは井戸など、別の表示をすること。生活関連施設学校や病院、官公署、公園などの生活関連施設は、原則として現在利用できるもので物件までの道路距離・施設名称(公立学校及び官公署の場合パンフレットを除き省略可)も明示する必要がある。価格・賃料土地は1区画、建物は1戸あたりの価格を表示すること。また、賃料・管理費・共益費は1ヶ月あたりの料金を表示すること。住宅ローン等住宅ローンは、金融機関の名称もしくは商号または銀行などの種類を明示して表示すること。さらに詳しく知りたい場合は「不動産広告の基礎知識~覚えておきたいポイント~」をご覧ください。⼆重価格表⽰不動産の広告においては二重価格表示の取り扱いについても確認する必要があります。二重価格表示とは、実際の販売価格と比較対象となる販売価格を同じ広告に記載することをいいます。たとえば「旧価格5,000万円 → 新価格4,500万円」といった値引きの前と後を同じ広告に記載することも二重価格表示に該当します。表示規約第20条において、以下の通り規定されています。「事業者は事実に相違する広告表示又は実際のもの若しくは競争事業者に係るものよりも有利であると誤認されるおそれのある広告表示をしてはならない」引用:不当な二重価格表示 - 第20条 原則二重価格の表示は禁止されていますが、次のような場合には認められています。旧価格の公表日と新価格の公表日が2か月以上期間があいていること旧価格は値下げ前の直近の価格になっていることチラシや広告において、価格変更のインパクトは大きいですが、間違いが起きやすい部分になりますので十分注意して広告作成をしましょう。まとめご紹介したルールや規制の他にも、数多くの広告におけるルールが存在します。住宅は衣食住に関わる必要不可欠な商品ですし、一度の取引額も高値になるので、おのずと規制も厳しくなります。住宅事業のマーケティング従事者およびマーケティング責任者の方は、ぜひ今回の記事をきっかけに自社の広告は大丈夫なのか確認してみてください。より詳しく知りたい方は「不動産広告のルールと注意すべきポイント ~あなたの広告は大丈夫ですか?~ 公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会」の記事が参考になります。