リスティング広告において、目標CPAの設定は非常に重要です。 適切な広告予算を算出したり、施策を改善するために用いたり、広告運用においては大きな役割をもつ指標です。そんな目標CPAについて、聞いた事があるけど、具体的な設定方法がわからない目標CPAは決めてるけど活用の仕方がイマイチわからない広告予算を決めたいけど、どこから試算したらいいかわからないという方に向けて今回は、CPAの解説から目標CPAの設定方法、活用方法まで具体的に解説をしていきたいと思います。関連記事:リスティング広告とは?かかる費用や仕組み、メリット・デメリットまで分かりやすく解説CPAとは?CPA(シーピーエー)とは、Cost Per AcquisitionもしくはCost Per Actionの略で、1件のコンバージョン(成果)を獲得するのにかかる費用を指します。コンバージョンとは、お問い合わせや購入、顧客獲得、会員登録など、ホームページを訪れたユーザーが起こすアクションのことを指し、Webサイトや広告運用においては最終的な成果を意味します。CPAは、1件のコンバージョンに対して『どのくらいの費用がかかっているか』を確認することができます。また、広告予算や方針などを見直すことが多いリスティング広告においては非常に重要な指標です。CPAの計算方法CPAは「費用 ÷ コンバージョン数」の計算式で求めることができます。 つまり「マーケティング施策にかかった費用」に対して「その費用を使って得たコンバージョンの数」で割った値がCPAになります。たとえば、 10万円の広告費をかけて、5件の申し込みがあったとします。 その場合「10万円 ÷ 5件」でCPAは2万円となります。別のケースとして、広告費を50万円かけて10件の申し込みがあった場合、「50万円 ÷ 10件」でCPAは5万円となります。申し込みの数自体は、後者の方が多いですが、費用対効果においては前者の方が高く、広告施策としては前者の方が効率が良かったと判断出来ます。目標CPAとは?目標CPAは、1件あたりのコンバージョンを、いくらの費用で獲得したいかを決める指標です。また目標CPAは、1件のコンバージョンにどのくらい利益を残したいかを決めるための指標とも言えます。たとえば、 1件あたり5,000円で申し込みが欲しい場合は、目標CPAを5,000円と設定をします。しかし、5,000円で1件申し込みを獲得しても利益が残らなければ、広告の成果としては良くありません。原価や経費、残したい利益などを計算した上で目標CPAを設定します。目標CPAの設定が重要な理由目標CPAを事前に設定しておく事は非常に重要です。特に初めて広告を出す商品は、「どのくらい広告予算を準備すれば良いかわからない」「1件の申し込みを獲得するために、にいくらかかるかわからない」など、実際に広告を出すまでイメージが沸かないと思います。こういった事態を避けるためにも、事前に目標CPAを設定するようにしましょう。目標CPAは必要な広告予算を予測するために必要目標CPAを事前に決めておくことで、おおよその広告予算を予測することができます。広告予算は以下の計算式でおおまかに算出してみましょう。『目標CPA × 目標コンバージョン数 = 広告予算の予測値』目標CPAを計算せず、広告予算を考えてしまうと、獲得したいコンバージョン数から大きく乖離する可能性があるので注意が必要です。たとえば、コンバージョン数100件が目標の場合を想定して説明します。目標CPAを計算して「目標CPA = 2万円」と考えた場合、必要な広告予算は『2万円 × 100件 = 200万円』となります。しかし、目標CPAを計算せず、とりあえず1万円として設定してしまった場合、広告予算は『1万円 × 100件 = 100万円』となり、計算した場合とそうでない場合で広告予算が大きくずれてしまいます。そうすると100万円少ない予算で広告配信を行わなければならず、結果的に獲得できるコンバージョン数は予定を大きく下回ってしまうことになります。目標CPAを決めないと、広告の費用対効果がわからない目標CPAを決めておけば、リスティング広告の配信中に広告施策がうまくいっているかどうかがわかります。目標CPAを実際のCPAが下回っている → 広告施策が上手くいっている目標CPAを実際のCPAが上回っている → 広告施策が上手くいっていない広告は投資活動ですので、かけた費用以上のリターンが生まれていることが重要です。目標CPAを決めておくことは、その投資が成功しているかそうでないかの判断に役立ちます。目標CPAの設定方法目標CPAを設定するために、まずは「限界CPA」を算出します。限界CPAというのは、1コンバージョンあたり売上から経費や原価を差し引いても、ギリギリ赤字にならない獲得単価のことです。計算式は以下のようになります。『限界CPA = 売上単価 - 原価 - 経費』たとえば、1コンバージョンあたりの売上単価が10,000円、原価7,000円、経費1,000円の場合、残りの2,000円が利益となります。 その場合、目標CPAを2,000円以下に設定しないと赤字になりますので、限界CPAは2,000円となります。それでは目標CPAの設定方法に入ります。目標CPAの計算式は『目標CPA=限界CPA-獲得したい利益』になります。 後ほど、具体的なモデルケースをご紹介しますが ここでは、簡単な例をご紹介します。商品単価:10,000円1件あたりの原価:6,000円1件あたりの経費:1,000円1件あたりの利益:3,000円獲得したい利益:2,000円この場合の目標CPAはいくらになるでしょう?『10,000円(単価) ー 6,000円(原価) ー 1,000円(経費)ー 2,000円(残したい利益)=1,000円(目標CPA)』となります。 そうすることで、1件あたり1,000円の広告費で獲得できれば2,000円の利益を獲得できるという計算になります。目標CPA設定のモデルケース目標CPAの計算方法は、商材やビジネスモデルによって異なります。いくつかの例をもとに解説をしてきます。リピートが少ない商品のケース(自動車購入、リフォーム、冠婚葬祭など)リピートが少ない商品とは、高額商品や冠婚葬祭など、購入したらすぐには再購入が発生しないような商品です。 自動車購入や住宅関連のような高額商品で、1度の購入から短期間での再購入を見込めない場合の計算方法は以下になります。『目標CPA = 売上単価 - 原価 - 経費 - 獲得したい利益』たとえば、100万円の商品で原価が70万円、経費10万円の場合、利益が20万円となり限界CPAは20万円となります。 そこからさらに獲得したい利益が10万円の場合は、目標CPAは10万円となります。まとめると、以下のような計算式になります。限界CPA = 100万円(単価) - 70万円(原価) - 10万円(経費) = 20万円目標CPA = 20万円(限界CPA) - 10万円(獲得したい利益) = 10万円リピートが多い商品のケース(化粧品、日用品など)リピートが多い商品とは、健康食品、化粧品、サプリメント、日用品のような1度の購入だけで終わらず、継続的に再購入してもらえるような商品です。 リピートが多い商品の場合は、LTVという指標を考慮する必要があります。LTVとは、Lifetime Valueの略で日本語では「顧客生涯価値」のことを指します。 1度の購入から得られる利益だけはなく、顧客から生涯にわたって得られる利益のことで2回目以降の取引にも、利益が発生する場合によく用いられる指標です。リピート型のモデルである場合は、LTVを考慮した上で計算をします。この場合の計算式は、以下のようになります。『限界CPA = (平均売上単価 - 平均原価 - 平均経費) × 平均購入回数』『目標CPA = 限界CPA - 獲得したい利益』商品によって単価が異なる場合や、購入回数が人によって異なるので、必ず売上単価や原価は平均で計算するようにします。たとえば、10,000円(原価6,000円、経費1,000円)の化粧品を通販で販売し、化粧品を買ってくれたユーザーは月に1度、4ヶ月間継続して購入してくれるとします。最終的に獲得したい利益を10,000円とした場合、以下のような計算式となります。限界CPA = (10,000円 - 6,000円 - 1,000円) × 4回 = 12,000円目標CPA = 12,000円 (限界CPA) - 10,000円(獲得したい利益) = 2,000円資料請求などをコンバージョンにするケース発生時点では売り上げには繋がらない「資料請求」や「メルマガ登録」といったアクションをコンバージョンとしている場合は、コンバージョンから実際の購入までの成約率を考慮する必要があります。計算式は、以下のようになります。『限界CPA = (売上単価 - 原価 - 経費) × CVからの成約率』『目標CPA = 限界CPA - 獲得したい利益』売上単価が50,000円(原価30,000円、経費5,000円)の商品があるとします。この商品は、10名からの資料請求があれば、そのうち3名は成約します。最終的に獲得したい利益を3,000円とした場合、限界CPAと目標CPAは以下のようになります。限界CPA = (50,000円(売上単価) - 30,000円(原価) - 5,000円(経費))× 30%(CVからの成約率) =4,500円目標CPA = 4,500円(限界CPA) - 3,000円(獲得したい利益) = 1,500円成約率が30%の場合、1件の資料請求に対して4,500円以上の広告費を使ってしまうと赤字になってしまいます。 そのため、広告スタート時点では、余裕を持った目標CPAを設定して実際の成約率を確かめながら、徐々に目標CPAを調整していくことが望ましいです。目標CPAが決まったらこれまで、目標CPAの設定方法を解説してきました。しかし、決めただけでは広告運用に活かしきれません。目標CPAを設定した後にどう活用するかが重要になってくるので1つずつ解説をしていきます。目標CPAが決まったらシミュレーションをする目標CPAが決まったら実際にシミュレーションをする事が大切です。解説してきた通り、目標CPAを決めるためには、1商品あたりの原価や利益、成約率や購入回数など、あらゆる指標を事前に把握しておく必要があります。 これはある意味、事業全体の戦略設計に近しいと思います。 どんぶり勘定で広告費を決めるのではなく、各指標を細かく計算しつつ、事業の売上目標と照らし合わせながらシミュレーションすることが必要になってきます。たとえば、 年間の売上目標が1,000万円とした場合、いくらの広告予算を想定すれば良いでしょうか。1商品あたり売上単価 = 10万円(原価5万円、経費2万円)商品の販売件数目標 = 1,000万円(売上目標) ÷ 10万円(売上単価) = 100件(商品の販売件数目標) 限界CPA = 10万(売上単価) - 5万(原価) - 2万円(経費) = 3万円残したい利益が2万円の場合は、目標CPA = 3万(限界CPA) - 2万円(残したい利益) = 1万円広告費 = 1万円(目標CPA) × 100件(商品の販売件数目標 ) = 100万円つまり、売上目標1000万円を達成したいとき、商品の販売件数目標は100件となり、目標CPAは1万円となります。この場合、100万円の広告費が年間で必要になります。さらにここで終わりではなく変化に対応できるシュミレーションをする事が重要です。上記のシュミレーションから『原価』が5万円から6万円に上がった場合はどうでしょう?1商品あたり売上単価 = 10万円(原価6万円、経費2万円)商品の販売件数目標 = 1,000万(売上目標) ÷ 10万(売上単価) = 100件 限界CPA = 10万(売上単価) - 6万(原価) - 2万円(経費) = 2万円※残したい利益が2万円の場合は、限界CPA = 残したい利益となり広告費をかけることができなくなってしまいます。このような場合、残したい利益を2万円以下にしたり、1商品あたりの売上単価を上げる、といった調整が必要になってきます。原価だけでなく経費やその他のコストが値上がってしまった場合や、逆に原価や経費が減った場合なども、あらかじめシュミレーションをしておきましょう。目標CPAは定期的な見直しが必要目標CPAは、定期的に見直して調整する事が重要です。 ここまで計算してきたのは、あくまで事業社側(広告主)の想定であり、実際に購入するのはユーザーです。 そのため、実際に広告配信を始めてみると思った以上にCPAが高くなってしまったり、逆にCPAが目標CPAを大きく下回る場合があります。目標CPAは市場の動きやビジネスモデルの変化によって調整していくものですので、広告配信途中の見直しも選択肢に入れつつ柔軟に調整していきましょう。目標CPAを算出したらシュミレーションの過程も広告代理店に共有する広告代理店に広告配信を依頼するときは、目標CPAの値だけではなく算出過程やシミュレーションも共有しましょう。広告代理店であれば、広告配信開始時におすすめの予算規模や、おおよそのCPAなどを把握していることもあり、提示した目標CPAが現実的なのか判断できる可能性があります。そのため、目標CPAの値を共有するだけでは「この目標CPAの達成は厳しいかもしれません」とお断りされる場合があります。しかし、目標CPAの算出に至った過程やシミュレーションを共有することで、仮に厳しい目標CPAだったとしても、指標毎の目標値や想定値を見直し、目標CPAを調整してもビジネスが成功するような一手が見つかるかもしれません。丸投げをしてしまうのではなく、これまで解説してきた目標CPAやビジネスモデル、商品の内訳など共有し、一緒に目標達成まで走る事が重要です。まとめ目標CPAについて重要な部分をおさらいします。目標CPAは必要な広告予算を予測するために必要目標CPAを決めないと、広告の費用対効果がわからない目標CPAが決まったらシュミレーションをする目標CPAは定期的な見直しが必要目標CPAを算出したらシュミレーションの過程も代理店に共有する目標CPAについて解説してきましたが、目標CPAを設定する事は、広告の成果を出すために非常に重要です。これから広告運用を始める方は、是非事前に決めていただきシュミレーションまで行って頂きたいと思います。関連記事:リマーケティング広告の調整でコンバージョン獲得単価を改善した事例(不動産関連)