BtoB事業のマーケティングにおいて、メールマガジン(以下、メルマガ)は非常に効果的な手段のひとつです。しかし、何を配信すればいいか分からない、配信しても成果が出るイメージが沸かない、という方も多いことでしょう。実際に私たちのクライアント(製造業)もご支援前のお打ち合わせでは、そうおっしゃる方が多かったです。確かにメルマガは成果を実感できるようになるまでに、長い時間を要します。メルマガ配信スタンドの契約、メルマガ読者の獲得(※)、メルマガ配信、成果、というステップを辿るため、成果を実感できるまで短くても数ヶ月、長いと1年以上かかることもあります。※補足. 過去に名刺交換をした方ややり取りをした事がある方のメールアドレスを、メルマガ配信対象として利用するのはやめましょう。なぜならその方々はメルマガの受信を同意する手続きを行なっていない方々です。同意を証明する記録がない場合、特定電子メール法に違反する可能性が高いので、正しい手続きを行なった方のみにメルマガは配信しましょう。時間はかかるものの、正しく活用できれば、大きな成果を得る事ができるのも事実ですので、長期の施策としてぜひご検討ください。そして今検討されている方に向けて、製造業のメルマガ配信のポイントをまとめます。製造業のメルマガの役割は、接点の維持と関係性の構築。製造業のメルマガの役割は、有益な情報や悩みの解決につながる情報を定期的に配信することで、見込み顧客との接点を維持し、より良い関係を構築することです。なぜなら製造業のようなBtoB商材は、BtoCの商材に比べて、顧客の検討期間が長く、単価が高く、意思決定者が複数人いることが多いです(表:BtoB商材とBtoC商材の、一般的な違い)。短期間で意思決定されにくい商材だからこそ、メルマガを活用して見込み顧客との接点を維持し続け、有益な情報を提供し続けることで、意思決定のサポートが可能になります。BtoBBtoC対象法人個人検討期間長期短期購買単価高額(数十万円〜)少額(〜数万円)意思決定者複数人一人事前情報多い少ないたとえば、部品製造技術を保有する企業と、その企業のメルマガを受け取る見込み顧客がいたとします。見込み顧客はその企業に部品製造を依頼する前に、さまざまな不安や課題や疑問を抱えていますよね。納期は何ヶ月くらいだろうか?品質に関するこだわりはどれくらいあるのだろうか?製造が難しい部品の依頼を受けてくれる企業はあるのだろうか?小ロットでも依頼は可能だろうか?費用はどれくらいかかるだろうか?こういった悩みを解決するメルマガを配信し続けることで、見込み顧客との接点が維持でき、悩みを解決してくれる良いメルマガとして読者が定着します。そしてそういった読者が増えることで、お問い合わせにつながる可能性が高まります。メリットとデメリットでは次に、製造業がメルマガを配信するメリットとデメリットについても考えてみたいと思います。メリットからご紹介します。商品や自社について、忘れられることが少なくなる営業効率が上がる(十分検討された上での、お問い合わせが増える)見込み顧客から信用される可能性が高まる見込み顧客とメルマガで長期的に接点を持つことができる長い検討期間をサポートできる次にデメリット(気をつけるべき点)を考えてみましょう。個人情報の流失につながるような誤配信メルマガはわずかな初期費用が必要なのと成果が出るまでに時間がかかりますが、比べてメリットは非常に大きい施策です。配信の設定方法、配信のアイデア、配信実績の相場、目指すべきゴール、注意点を把握してしまえば、メルマガは大きなリスクなく始めることができます。では次にメルマガで使える20のアイデアを紹介します。製造業のメルマガで使える20のアイデア製造業では以下のようなメルマガ配信を行うことができます。新商品リリースのお知らせプレスリリースのお知らせ調査内容のお知らせ(アンケート、市場調査など)業界情報のお知らせ第三者からの推薦のお知らせ(業界の権威、研究者、著名人など)技術系のブログ記事の紹介お客さま事例の紹介よくある質問の紹介ランキングの紹介(商品ランキング、読まれた記事ランキングなど)メルマガ限定コラム創業者や従業員のインタビュー展示会への出展案内セミナーの案内実店舗の案内(販売店、取扱店など)資料請求の依頼商品の紹介クロスセル商品・アップセル商品の紹介季節のイベントに合わせたメール(お正月、暑中見舞いなど)採用・人事に関する案内SDGsなどの自然環境への影響に関する調査のお知らせまた反対に、以下のようなアイデアはメルマガでは避けるべきでしょう。宗教や政治に関するものアダルト系など商品と全く関係のないもの競合や他社を非難するもの資料請求やお問い合わせ、自社セミナーの宣伝ばかりをするもの読者の気持ちをネガティブにするようなもの実際に送ってみたデータここからは、実際に製造業のクライアントでメルマガ配信をする中で、得られたデータについて見ていきましょう。1年間でおおよそ80通のメルマガを配信しました。※クライアントからは事前に許可をいただき、事実と乖離しすぎない範囲でデータを修正して掲載しております。開封率期間を通しての平均開封率は約27%です。開封率(※)は、件名次第である程度は操作できてしまうので、そこまで気にして運用していません。極端な例ですが、たとえば「【メルマガ読者限定コラム】〇〇機械の導入の落とし穴。導入前に知っておきたい注意点5選!」のような若干煽ったタイトルをつければ、開封率を高くすることができます。逆に当たり障りのない件名をつければ、開封率は低くなります。※開封率...メルマガを配信した読者に対して、何人が開封したかを表す指標です。計算式は「開封率 = ( 開封数 ÷ 有効配信数 ) ×100」で算出します。今回のメルマガ運用では、件名で煽ることはしていません。ほどほどにキャッチーな件名を用いるだけに留めるようにしており、お客さまのニーズを探るために使用しています。たとえば、時期によってお客さまが興味を持つ商品は違うのか?同じ商品でもキャッチコピーを変えるとメルマガの開封率は変わるのか?など、件名を変えながら検証していきます。すると分かりやすく開封率に差が生まれることがあります。その結果を元に、Web広告の商品別予算比率を変えたり、商品ページの改修を行なったり、ブログコンテンツのテーマを変えることで、マーケティング活動全体の最適化を図っていきます。配信内容上述の通り、製造業は商材の性質上、意思決定に時間がかかります。そのため製造業のメルマガで気をつけなければいけないのは、顧客の意思決定を急がせないようにすること、です。意思決定を急がせようとすればするほど、お客さまはその会社やブランドから押し売りされているように感じてしまい、検討の選択肢から外すようになります。そのためメルマガで配信するものも、「資料請求の依頼」などの売り込みの要素が入っているものは、極力控えるといいでしょう。上の図は、配信した内容を円グラフとしてまとめたものになります。基本的にはブログやメルマガ限定コラムなど、お客さまの悩みや課題解決につながる配信がメインです。「商品A紹介」「出展情報」「セミナー案内」なども少ない割合ではあるものの配信します。しかし、原則、お客さまの悩みや課題解決につながる情報をメルマガに含めた上で、配信しています。長い時間をかけながら少しずつお客さまの悩みや課題を解決できれば、それが配信元の企業や商品への信用につながり、お問い合わせや資料請求につながります。CTAボタンのクリック率期間を通しての平均クリック率は約8%です。こちらも、CTAボタン(※)の装飾や設置位置で、ある程度数字を操作できてしまうので、高ければ良い、低ければ悪い、わけではありません。※CTAボタン...読者のクリックを促し、アクション(次のページへの遷移など)へと導くためのメルマガ内に設置したボタンのことです。当たり障りのないCTAボタンを設置した時でも、クリック率が異常に高くなることがあります。それは「件名(読者の興味)」と「メルマガの内容(興味に合った内容)」と「ボタンの先にあるコンテンツへの期待(興味のある情報を更に手にいれるチケット)」が合致した時です。それはつまり、読者がほしい情報をメルマガで提供できている状況と言えます。こういったメルマガ配信が続くと、配信直後にお問い合わせや資料請求が入るようになってきます。メルマガの運用ではこの状況を目指すことが、ひとつのゴールだと私たちは考えています。注意点避けるべきメルマガのアイデアを上述しました。それ以外にも、その他いくつか運用上の注意点があるので、こちらにまとめます。ただしすべてのメルマガ運用に当てはまるものではないので、こういった注意点”も”ある、くらいに留めておいてもらえると嬉しいです。同じ件名または似たような件名は、開封率が徐々に落ちてくる長文すぎるメルマガが続くと、開封率が徐々に落ちてくる複数の商材や事業がある場合、メルマガ読者のリストにそれらのターゲットが混在している場合、配信対象のリストは分けた方がいいまとめ冒頭でもお伝えしたように、メルマガの運営は効果を実感できるまでに、長い時間がかかります。しかしBtoB商材の中でも特に単価が高く、検討期間も長く、意思決定者が複数人関わる製造業だからこそ、時間をかけてでも見込み顧客の意思決定をサポートできるメルマガとの相性は非常に良いです。逆に思い当たるリスクとしては「時間がかかる」くらいです。大きな初期費用もかかりませんし、よほどのことがない限り、読者がある日突然ゼロになることもありません。中長期に向けた施策を考えている企業にとっては、非常に取り組み始めやすい施策だと思いますので、是非ご検討ください。この記事がそういった企業の方々のお役に立てれば幸いです。関連記事:「ニッチ商品でも、知恵を絞ればマーケティングで成果を出せる」予想外の提案から始まり、売上が2倍以上に伸びた取り組み