弊社が支援しているクライアントでの検証結果についてご紹介します。今回は、ハウスメーカー・工務店の住宅展示場における「モデルハウスの見学者数」を改善をするために、顧客の悩みを仮説立てて、企画立案、実行まで行いました。注意:以下の事例は私たちの状況に基づくもので、全てのケースに当てはまるわけではありません。展示会の実施方法による「見学者の満足度」の改善を目指した事例本記事では、住宅展示場で想定された見学者の悩みや困りごとをもとに、弊社がご提案して実施した企画の経緯をまとめています。後述しますが、定量的なデータや結果は企画の性質上、取得していません。クライアントの担当者と私たち支援会社の主観的な内容が多いですが、ご了承ください。また、「住宅展示場」はまとまった土地が確保できる地域に多い施設のため、都心部の方はご存知ないかもしれません。簡単に「住宅展示場」について解説します。住宅展示場は、一戸建て住宅を建築する際の比較検討のために、実際に住宅を建てて展示してある場所のことです。広い土地の中に複数の住宅メーカーがモデルハウスを建設し、見学者はそれらを見て回ります。住宅展示場は地価の高い都市部よりも、郊外や、地方の主要都市周辺で纏まった土地が確保できる地域、海沿いの埋立地、工場跡地などに立地する場合が多いです。参照・画像引用元:住宅展示場 - Wikipedia前提と課題クライアントの業種はハウスメーカー・工務店、注文住宅の設計から施工までを行う会社です。クライアントは住宅展示場内にモデルハウスを所有しています。それを見にきてくださる「モデルハウス見学者数」がマーケティング上のKPIのひとつ(※)となっており、そこでの満足度が「受注数(KGI)」に直結します。※完成した住宅に住む前に、希望者に向けて見学会を行う「完成見学会」への来場者数がKPIとなる場合も多いですね。業種ハウスメーカー・工務店対象とする施策住宅展示場のモデルハウス見学課題「モデルハウス見学者数」を増やしたい。そのために見学を阻害する要因を洗い出して、排除したい。住宅展示場には日々多くの方が来てくださいますが、会場に来ているすべての来場者がクライアントのモデルハウスを見学するわけではありません。会場の来場者のうち、できる限り多くの方にモデルハウスを見学してもらうにはなにができるだろう?見学を阻害する要因はなんだろう?と考え、取り除く必要がありました。課題に対する仮説課題に対する仮説はふたつあります。仮説1. 営業担当者の接客が長く、自分のペースで見学ができない今回支援したクライアントに限らず、その他のハウスメーカーも同様のKGI・KPIを設定していることが多く、住宅展示場でのお客さまの呼び込みや接客は熾烈を極め、お客さまの取り合いが起こっています。そのため対象の住宅展示場では、過度な呼び込みや長時間の接客が多い状況でした。私も競合調査としていくつかの住宅展示場に見学に行きましたが、モデルハウスに入ると、営業担当者から声をかけられ接客が始まり、早くて20分、長いと1時間以上も説明を聞くことも。1つのハウスメーカーにつきそれだけの時間がかかるので、10社近くある住宅展示場のすべてを見学して比較するのは大変です。(接客時間がそれだけ長いのは別の理由もあるのですが...)どうしても見学したいモデルハウスを1〜2個入り、そうでないモデルハウスは以下の3つが揃わなければ見学しないでしょう。時間の都合が合う体力・気力が残っている外から見て興味が湧いたなんせ一度入ったら、30分近く時間を取られ、営業担当者と会話(説明や傾聴にも体力がいる)しなければなりません。営業担当者の長時間の接客は、顧客のモデルハウス見学を阻害する要因になるだろうと考えました。仮説2. 見学者必須のアンケート記入が億劫で、見学のハードルが上がるモデルハウスの見学を行うとアンケートの記入が求められます。記入する情報としては、以下のものがあります。個人情報対象の住宅メーカーを知ったきっかけ住宅建築のスケジュールや予算好みの住宅デザインや内装や機能営業担当者やモデルハウスへの評価より質問項目が少ないアンケートもあれば、多いものもあります。中にはSNSフォローやLINE公式アカウントの登録に誘導されることもあるので、非常に手間と時間がかかるのです。この記入が1度だけであればまだ分かります。しかし各モデルハウスで記入必須となると、、、どうしても見たいモデルハウス以外に見学に入るのは、億劫になりますよね。一部の住宅展示場では、会場入場時に一度記入するだけで済むように工夫されている施設もあるみたいですが、対象の展示場は各モデルハウスで記入必須となっていました。仮説に対して行なった施策上記の仮説をもとに、「勝手に見学会」と銘打った見学会を企画し実施しました。この企画のポイントは2つ。営業担当はお客さまを接客しないアンケートを取らないお客さまはモデルハウスに入り、自由にモデルハウスを見学し、好きなタイミングで帰ることができます。もちろん、施設内に営業担当はいるので、気になることがあれば質問をしていただくことも可能です。ただしアンケートを取らないため、後日ハウスメーカーから連絡を取ることができないというリスクもありました。営業活動を行うなかで、お客さまの個人情報の取得は非常に大切になっていたため、こういったリスクも事前に伝えた上で実施しました。また、事前告知としてLINE公式アカウントやInstagram広告での案内を行いました。施策から得られた結果今回は、アンケートを実施できない企画であり、住宅展示場の総来場者数を把握する術もないため(把握できたら総来場者数に対する見学者の割合を出せるのですが)、定量的なデータの取得は試みていません。以降の内容はあくまでクライアントや私たちの主観的なものですのでご注意ください。得られた結果はこちらです。見学者が増えた(会場来場者に対して見学してくれる方の割合が上がった)営業効率が上がった(購入意欲の高い方からの相談が増えた)また、事前告知に関してもLINE公式アカウントで配信した投稿は、開封率、クリック率共に比較的高い数値を計測しており、他の企画と比べてもお客さまの興味関心が強いと感じました。企画開封率クリック率今回の企画50.8%17.2%企画A27.8%22.7%企画B31.7%8.81%企画C15.9%0%※開封率...配信した投稿が開封された割合。※クリック率...投稿内のリンクがクリックされた割合。得られた結果を基にした考察あくまで今回のケースでの結果のため、すべてのケースに当てはまるわけではないですが、このような結果となりました。この結果をもとに、以下のように考察しました。「長時間の接客」と「アンケート記入」は見学のハードルを上げる仮説をもとに「接客なし」「アンケート記入なし」の企画を行ってみましたが、(肌感覚ではありますが)見学者数が増えたのと、事前告知も反応が良かったため、「長時間の接客」と「アンケート記入」は見学のハードルを上げるのだと改めて感じました。また、一般財団法人住宅生産振興財団が出している「住宅展示場アンケート調査報告書」によると、「モデルハウスに入りづらい、わかりづらいと感じるところはどんなところか?」という質問に対して、43%が上記のふたつの悩みを抱えていることもわかりました。21.5%が「営業が待ち構えていて入りづらい」と回答21.5%が「アンケート記入」と回答今回の企画で、この43%の悩みを解消できるのであれば、確かに見学のハードルを下げることができそうです。※参照:住宅展示場アンケート調査報告書 - 一般財団法人住宅生産振興財団相談をくれるお客さまだけを対応すれば営業効率は上がるアンケートを取得していないので、後日ハウスメーカーが主導してお客さまに連絡を取ることはできません。しかしお客さまから連絡をくださる場合や、相談を持ちかけられる場合があります。そういったご相談は、ターゲットの方からのご相談商品と要望の相性が良い(要望の解決ができる商品)と分かった上でのご相談お客さまの都合がいいタイミングでのご相談であるため、非常に営業活動が行いやすいのです。今まではアンケートを記入してくださった方全員に後日連絡を取り、営業を行なっていましたが、そういった方は上記の3点がすべて揃っているわけではないため、これらが揃っている方に比べると営業効率が悪かったのです。関連記事:「リードの質」ってなんだろう?分解すると見えてくる、改善のポイント。押し売りしなくても良い状況を作ることがマーケティングの目的であるため、今回の企画はその目的に直結する施策だと感じました。事業主が自らのためだけに行なっている施策は、お客さまのカスタマージャーニーを邪魔している可能性がある長時間の接客は、事業主にとっては「説明した」「アピールした」という感覚を得ることができるので安心します。またアンケートも、お客さまの個人情報があれば後日アプローチできるため、事業主にとっては安心材料となるでしょう。しかし、事業主のメリットだけを目指した施策になっている場合は注意が必要です。お客さまにもメリットがある形で施策を講じなければ、お客さまの購買プロセスの邪魔をすることになり、最終的に自らの首を絞めることになります。これまでのモデルハウスでの対応はそのプロセスを邪魔していた可能性が高かったため、今後何かしらのマーケティング施策を実施するときには、「お客さまのカスタマージャーニーを邪魔してないか?」を担当者間で問うことが大事だと、改めて気が付きました。さいごに今回の施策は、モデルハウス見学者数を増やすために、「長時間の接客」と「アンケート」の実施をやめた企画を考えました。今回の事例を通して、住宅メーカーのモデルハウス活用方法を見直すきっかけになれば幸いです。注意:以下の事例は私たちの状況に基づくもので、全てのケースに当てはまるわけではありません。その他のハウスメーカー・工務店の記事はこちらにまとまっております。関連ページ:「工務店・ハウスメーカー」に関する記事一覧