BtoBのマーケティング支援をしていると、「問い合わせを増やしてほしい」というご相談をよくいただきます。もちろん問い合わせが増えること自体は良いことです。ただ、数が増えたのに売上がついてこない、営業の手間だけが増えた、というケースは少なくありません。数を追うと、自社のターゲットから外れた相談が増えたり、単価の低い案件ばかりが集まったりします。売上につながる問い合わせを得られるかどうかは、施策を走らせる前の「設計」で大部分が決まります。この記事では、具体的な施策は書いてないですが、私たちアルテナがご支援しているあるBtoB事業のお客さまの事例をもとに、設計段階で何を決め、途中でどう判断を変えたのかをご紹介します。最初に決めるのは「どんな問い合わせが欲しいか」施策の話に入る前に、まず「ゴールの定義」が必要です。何件欲しいかではなく、どんな問い合わせが来れば売上につながるのかを明確にします。ここが曖昧なまま施策を始めると、数は増えても「なんか違う問い合わせが多い」という状態に陥りがちです。「問い合わせが足りない」は本当か本件のお客さまの場合、「問い合わせの数」自体は十分ではないものの、それなりに来ていました。しかし中身を見ると、小規模事業者からの相談が大半で、受注単価の高い中〜大規模の企業からの接触がほとんどない状態でした。課題は「問い合わせが足りない」ではなく、「欲しい問い合わせが来ていない」ということ。この認識を最初に合わせられるかどうかで、その後の施策設計はまったく違うものになります。売上構造を確認し、方向を決める私たちはまず、事業の売上構造を一緒に確認しました。1件あたりの受注単価はいくらか、施工方法によって単価はどう変わるか、対応できるエリアはどこか。そのうえで方向性を2つ決めました。「中規模以上の企業からの問い合わせを増やし、1件あたりの単価を上げること」と、「業界内で指名で選ばれるポジションを取ること」。この2つが決まったことで、施策の優先順位が自然と見えてきました。「誰から来てほしいか」でマーケティングの中身が変わるゴールが決まると、その先のすべての判断基準が変わります。コンテンツの切り口、広告のターゲティング、サイトの導線。すべてが「欲しい問い合わせ」から逆算されたものになります。BtoB事業で、Instagram広告が主要チャネルになった話支援当初は「BtoB事業ならGoogle検索広告が本命だろう」と考えていました。ところが実際に運用してみると、もっとも多くの問い合わせにつながっていたのはInstagramを含むMeta広告でした。チャネル別の内訳を見ると、全体の半数以上がMeta広告経由だったのです。理由を考えると、届けたい相手である製造業の経営者層は、検索で能動的に情報を探す場面よりも、SNSのフィードで受動的に情報に触れる場面のほうが多い。自分ごとの訴求が流れてきて、初めて「こういうサービスがあるのか」と関心が生まれる。これは設計段階で「中規模以上の経営者に届ける」と決めていたから、ターゲティングを経営者層に絞って検証できた結果です。方向性が曖昧なまま広告を回していたら、この発見にはたどり着けなかったと思います。反応の良いエリアに集中する広告はエリア別にも分けて配信しました。東海・静岡・関東・関西の4エリアで比較した結果、静岡エリアのCPAが13,000円台ともっとも効率がよかった。全方位に配信するのではなく、反応の良いエリアに集中していく。この判断も、「届けたい相手」が明確だったからブレずにできました。数字が伸びたのに、営業の手応えがなかったここからは、支援の途中で判断を変えた話です。施策が軌道に乗り、問い合わせ数は右肩上がりに伸びていました。数字だけ見れば順調です。問い合わせ管理シートで見えた現実営業側からは「数は増えたけど、手応えがない」という声がありました。そこで問い合わせ管理シートを作り、1件ずつ「どんな会社か」「どの規模感か」「商談に進んだか」を追跡しはじめました。すると、問い合わせの多くが小規模事業者であることがわかりました。数は増えていましたが、売上につながる問い合わせの割合はまだ低く、GA4(Googleが提供するアクセス解析ツール)画面では見えない現実が、管理シートを通じて可視化されました。ペルソナを作り直すこの結果を受けて、私たちはペルソナを見直しました。これまでのペルソナは中小企業の社長ではあるものの事業規模を明確にはしておらず、売上や施設の大きさを設定せずに走っていましたが、「15億円規模でなおかつ複数施設を運営する製造業を経営する50代の社長」という具体的な人物像を設定しました。このペルソナが普段どんな情報に触れているか。日経新聞の電子版を読み、業界の技術セミナーに参加し、省エネやCO2対策に関心がある。そういう人に届くコンテンツと広告を揃えていく方向に、施策を調整しました。ペルソナを設定し直してから、問い合わせの質は明らかに変わりました。大手メーカーの工場や中堅規模の製造業からの相談が入るようになり、見積もり規模も上がっていきました。問い合わせの「前」と「後」も設計する集客して終わりではありません。サイトに来た人がどう問い合わせに至るか、問い合わせの後にどう売上につながるか。この前後の設計も、売上に届くかどうかを左右します。「納得した状態」で問い合わせてもらう本施策では、事例のインタビュー記事を充実させ、「導入するとどう変わるか」を具体的に見せました。問い合わせのハードルを下げるのではなく、十分に判断材料を揃えたうえで問い合わせてもらう設計です。こうすることで、「まだ情報収集段階だった」というケースが減り、商談に進む割合が上がりました。売上まで追跡して、初めて「設計が正しいか」がわかる問い合わせ管理シートで追跡を続けた結果、有効リード率は約30%、成約率は約40%という数字が見えてきました。100件の問い合わせから約12件の成約が生まれ、受注単価と掛け合わせれば投資対効果が計算できる状態になっています。ここまで追跡して初めて、設計が正しかったのかを判断できます。GA4(Googleが提供するアクセス解析ツール)のコンバージョン数だけでは、売上に届いているかどうかはわかりません。設計が正しければ、結果は変わる約1年半の伴走を経て、問い合わせ数は支援開始前の月2〜7件から月105件にまで伸び、売上高も前年比で250%の成長をしました。業界の表彰式では2部門で受賞を果たし、当初のゴールだった「業界で指名される存在になる」にも近づいています。ただ、この記事でお伝えしたいのは数字の大きさではありません。設計を定義し、途中で見直し、方向を修正し続けたからこそ、問い合わせの「中身」が変わり、売上構造にも変化が生まれたということです。まとめマーケティングの成果を「問い合わせ数」だけで測ると、施策が数を稼ぐ方向に寄っていきます。売上につながるかどうかは、施策を走らせる前に決まる部分が大きく影響します。「誰から、どんな状態で問い合わせてほしいか」を先に決めること。そして問い合わせの先にある商談・成約まで追跡すること。この設計があるかないかで、同じ施策をやっても結果は変わります。そして設計は一度決めたら終わりではなく、実際のデータを見て修正していくものです。私たちの支援でも、問い合わせの中身を見てペルソナを作り直し、広告のチャネル配分を変え、施策の方向を調整してきました。施策の実行だけでなく、この「設計」と「修正」の部分からお客さまと一緒に取り組む支援を行っています。問い合わせの数を増やすことがゴールではなく、お客さまの売上に届くマーケティングを一緒に作ること。それが私たちの支援の軸です。