マーケティングは、営業と比べると専門的な知識、専門的なスキルを求められる場面が多く「営業からマーケティングにキャリアチェンジをしたいけど、これまでのスキルは活かせるのか?未経験でも活躍できるのか?」という疑問を抱えている方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。私も7年間、マーケティングとは全く異なる業界の営業職に従事していました。いまでこそマーケティングを通してクライアントの事業成長を支援していますが、転職する前は「これまでの営業経験が活かせるのだろうか」と不安もありました。しかし今は営業で培った経験やスキルが、マーケティング支援のあらゆるシーンで強みになっていると実感しています。本記事では私の実体験をもとに、営業経験の「何が」「どこに」生きているのかという点について「5つの経験」に分けて解説します。営業職からマーケティング職に転身しようと考えている方に、過去の営業経験がマーケティング職でも活かせることをお伝えできたら嬉しいです。「本質的な課題」を見つける経験私たちはクライアントマーケティング課題を解決すべく、マーケティングの戦略立案から実行支援まで行います。支援の際に、プロジェクトは大まかに以下のプロセスで進みます。この中で最も重要なポイントは「本質的な課題を見つけ出す」ことです。本質的な課題を見つけ出すその課題に対して正しく戦略を立てるその戦略を迅速に実行する「本質的な課題」とは、事業成長を妨げている最も大きな根本にある課題です。ここを見誤ってしまうと、戦略立案から実行までのすべてがズレてしまい大きなタイムロスにつながってしまいます。ピーター・ドラッカーが著書「現代の経営(下)」で記している通り、重要なのは「本質的な課題を見つけ出す力」(=正しい問いを探すこと)です。営業経験ではあらゆる課題を持った顧客と対峙し、課題を深掘り、時には顧客が気づいていない課題を見つけ、最適な提案を考えてきました。これはまさにマーケティング支援で求められるプロセスと全く同じです。重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである。間違った問いに対する正しい答えほど、危険とはいえないまでも役に立たないものはない。「現代の経営」 - ピーター・ドラッカー営業は「提案力」よりも「課題発見力」営業では「圧倒的なトーク力」「魅力的な提案力」といったアウトプット能力に注目されがちですが、わたしは「課題発見力」が何より大切な能力だと思っています。どんなに流暢(りゅうちょう)に商品を説明しても、素晴らしいメリットを並べて説得しても、顧客が「本質的な課題が解決されない...」と感じれば売れることはありませんでした。”売れる営業マンはあまりしゃべらない”と言います。これは話すことよりも聴くことに重きを置くことで、相手を知り、相手にとって必要な情報だけを選別することができるから売れる、ということだと私は解釈しています。営業で培った「課題発見力」はマーケティング支援の中でも生きてきますし、そのスキルがあればマーケティング職に転身しても良いスタートダッシュが切れるはずです。課題発見につながる「ヒアリング力」課題を見つけ出すために重要な「ヒアリング」は、7年間の営業経験で身に付いた私の得意分野です。営業では多くのお客様とやりとりしてきましたが、最初にお客さまから聞いた課題と、ヒアリングを進めた上で出た課題が全く違う、ということは珍しい話ではありません。マーケティング支援の中でも、頻繁に同じことが起こります。深くヒアリングしていくうちに「課題はこっちじゃないですか?」という別の課題が見つかることは少なくありません。「相手に言われただけを解決する」という姿勢では決して「本質的な課題」は見つからず、マーケティングにおいても良い成果は望めません。「お客様自身も気付いていない課題が、もしかしたらあるかもしれない」という姿勢でヒアリングをすることが重要であり、これは営業経験がマーケティング支援の仕事で生きていることのひとつです。商品を理解しないと売れなかった経験営業において、自分が売る商品の理解度が低いと商品は売れません。最低でもメリット・デメリットをそれぞれ10個は言えるくらい、ひとつひとつの商品に対して理解を深めなれば当然プロとして信頼はしてもらえませんし、お客様の心を動かすことはできません。私もトークを磨くことばかりに目が行き、商品の理解を厳かにしていた時期がありましたが、当然売れることはなく胡散臭さだけが増しました。顧客の商品の理解を深めることは、マーケティング支援においても重要な要素です。営業と同様、不安を煽ったり過度な売り込みは胡散臭さが増してユーザーは離れてしまいます。私たちのサービスのミッションは「顧客のマーケティング活動を通して、ターゲットに商品の情報を届け、魅力を感じてもらい、購入に至らせる」ことです。このミッションを達成する上で、クライアントの商品を理解することは必要不可欠であり、それがより深いものであればなお良いでしょう。「商品を徹底的に理解した上でないと、良いアピール方法や伝え方が見つからない」という知識は過去の営業経験で培われ、今の仕事で大いに役立っています。参考:クライアントの商品やサービスは自分自身がまず試す。マーケティング支援会社として「顧客体験」を大切にするワケ商品のデメリットを理解する私の前職は反響営業だったということもあり、商品におけるメリットではなくデメリットを中心にお伝えをしていました。なぜならお問い合わせしてくださった時点で「商品の魅力をある程度知ってくれている」からです。そのため、営業がいくらメリットや商品の良さをお伝えしたところで「いや、だから問い合わせまでしてるんだけど...」と分かりきったことの反復になってしまうことが多くありました。そんな時は、あえてデメリットを多く伝えることで「この人は赤裸々に話してくれるから信頼できる人だ」と受け取ってもらえますし、デメリットに関しても隠すのではなくカバーできるようなアピールや補足をすると、顧客に安心していただけます。マーケティングでも近しいことが言えます。広告で商品の魅力を知り、ランディングページやホームページに移動しても、強みやメリットばかりが掲載されていると「押し売り」のような印象を受けます。そして信頼や安心よりも「本当に大丈夫かな?」という不安が大きくなってしまいますよね。顧客は「メリット」と併せて「デメリット」も考慮した上で意思決定をしたいのです。そんな時に事業主ができることは、デメリットをデメリットのまま終わらせず、安心してもらえるような情報掲載や伝え方を考えること。このように商品やサービスのデメリットや弱みも理解し、それをカバーできる方法を考える習慣がついているのも、営業時代に身につけたスキルのひとつです。ユーザーと直接対峙した経験営業では、ひとりひとりのお客様と対峙し、直接、ダイレクトにコミュニケーションを取ることができます。一方マーケティングは見えない顧客(お問い合わせが入る前の接点がない段階の顧客、の意味)とコミュニケーションを取る必要があり「どんな人が買うのか」「どんな表情や感情で、この広告(やメールマガジンやブログ)を見るのか」ということを、頭の中で想像しながら施策を考えなければいけません。営業経験でなくとも、多くの人と接して課題や悩みについて話した経験は、見えないユーザーの解像度を引き上げ、よりユーザーのインサイトに刺さる施策を行うことができます。それだけでなく「この訴求は信頼をなくしそうだな」「Webサイトのこの部分に、こういう情報が不足しているな」など、顧客目線での「穴」を見つけやすくなるのは、営業経験で培われた想像力の賜物です。私は実際に購買する瞬間(意思決定をする瞬間)の表情や声を知っているからこそ、見えないユーザーとのやり取りでも、映像を見ているかのような解像度でユーザーの表情がイメージができます。ユーザーの悩み、行動、表情、感情、需要などをイメージし、具体的なカスタマージャーニーをイメージできるのは「営業経験×マーケター」ならではの強みといえるはずです。足が震えるようなトラブルの経験営業にはトラブルがつきものです。営業は直接お客様と対峙するわけですから、予期せぬトラブルや足がすくむようなトラブルが発生します。しかし、営業で過去にトラブルを経験した人の多くは、今その経験が財産になっているはずです。トラブルを解決するためには次のようなプロセスが求められます。即座に原因を究明し誰に相談すべきか・どう報告するかを考え正確かつ迅速に実行し収束させ再発防止策を練るさもなければトラブルはどんどん火力を増し、取り返しが付かなくなりますよね。どの仕事においても、予期せぬことやトラブルは起こり得ます。マーケティング支援業も同じです。自身の勉強不足が招くトラブル、環境の変化による起こるトラブル、第三者によるトラブル、運によるトラブルなどなど、トラブルが起こる可能性はゼロにはできないです。だからこそ、トラブルにいち早く対応できる能力、未然にトラブルを防ぐ振る舞いは、マーケティング支援の中でもとても大切なスキルです。私自身恥ずかしながら営業時代に多くのトラブルを経験し、トラブルを放置することの危険性、トラブルを未然に防ぐ重要性をよく理解しているからこそ、事態の先に起こることを想像する力、解決までのスピード感、未然に防ぐ仕組みづくりといったスキルにつながっていると感じています。マーケティング支援者が引き起こすトラブルの例実際の業務に当てはめて考えてみましょう。以下はあくまで”例”です。仕入れを伴う事業を支援している場合、マーケティング施策による成果は、仕入れ数を判断する材料のひとつとなります。そんなときに、パフォーマンス悪化を放置していたら誤った仕入れにつながりかねません。この報告で遅れを取ればクライアントの事業に対して、多大な損失を与える可能性があります。マーケティング支援業において、自分の判断ひとつでクライアントの事業を伸ばすことも失速させることもできるのだ、と理解した上で支援しなければなりません。「見える数字」だけをアテにすることで起こるトラブルの例また、広告管理画面や分析ツールなどの「見える数字」だけを頼りにしていると、判断ミスを起こし、トラブルに発展することもあります。たとえばリスティング広告の配信をしている時、CVRを上げようと広告文やランディングページに過度な表現を使用しているとします。確かに広告管理画面や分析ツールでの「見える数字」は好調かもしれません、しかしその表現で傷付いた方が、ネガティブな口コミを投稿する可能性や、訴えられて裁判になることだってあり得ます。そういった「見えない数字(データ)」を蔑ろにすると、トラブルに発展しかねません。こういった見えないリスク(見えにくいリスク)に事前に気付けなければマーケティング支援のプロとは言えないですし、私含めトラブルを多く経験した営業マンは、こういったリスクへの感度が敏感になっているはずです。相手に伝える難しさを実感した経験クライアントの事業成長の一端を担う以上、商品やサービスの良さはもちろん、作り手の想いを言語化して「わかりやすく相手に伝える力」が重要になってきます。特に私たち(アルテナ株式会社)はクライアントの商品を短期間でとにかく多く売りまくようなマーケティング(必要とない人に無理やり販売すること、の意味)、良しとはしません。過度に煽った表現や、不安を増幅させるような表現でのマーケティング施策は行わず、お客様がクライアントの商品を信頼してファンになってもらえるような状態、継続的な事業成長が可能な状態を目指しています。そうなるためにも、ユーザーの内なるニーズやクライアントの持つ想いを上手く言語化して、相手の心に響くように伝える能力が大切です。ただ話すなら誰でもできる営業時代にお客様から「ただ資料を読むだけなら誰でもできる」そう叱責された経験があります。営業において、商品について”話す”だけなら誰にでもできます。しかし、相手の心に届くように"伝える"ことは意外と難しい。話す内容はもちろんですが、身振り手振りや声の強弱、リアクションなどさまざまなことを工夫し、それでもなお「今の伝わってないな」と感じれば説明の仕方を変えるなどして、ようやく相手に伝わります。マーケティングにおいても、単なる商品の説明やメリットを言語化することはAIでもできる時代です。だからこそ、ユーザーの心に響くような伝え方を考え、実際に商品をその場で買ってもらえるような熱量を持って、感情をうまく言語化する能力がときには必要です。それは営業経験で得た「話すだけでは売れない。顧客の悩みを言語化し代弁する、事業主の想いを言語化して伝え、双方のそれらをうまくマッチングできなければ響かない」という経験がマーケティングにも生きていると言えます。まとめ今回は『営業職からマーケティング職に転身した私が伝えたい「マーケティング支援で活きた5つの営業経験」』というテーマで、自分自身の経験をもとに書きました。マーケティングは仕事での経験、仕事以外の経験を含めた総合力が試されるものだと感じております。本記事では営業という職種にフォーカスして書いていますが、営業に限らずどのような経験でもマーケティング職に活かせるはずです。マーケティングは専門知識の深さも重要ですが、同じくらい経験の広さも重要。今は別業種や別職種だとしても、工夫や努力次第であなたの経験が強力な武器に代わるので、この仕事に興味がある方は是非マーケティング職にチャレンジしてみてください。この記事を読んでくださった方の中で、「名古屋」で「マーケティング職」へ挑戦してみたいけど実際どうなの?話を聞いてみたい!という方はお気軽にご連絡ください。