「問い合わせは増えているけど、狙っている企業規模とは異なるお客様からのお問い合わせが多く、目標売上に届いていない。」そんな課題を抱えていたケースの改善事例をご紹介します。
まず手をつけたのは、広告の調整や問い合わせフォームの改修ではなく、もっと手前にあるペルソナを見直すことでした。そこから、トップページや広告画像の修正に着手していきました。
この仮説検証の過程を、順を追ってお伝えします。
ペルソナをより具体化して、施策の中身を見直すことで、お問い合わせの質を上げた事例
今回ご紹介するのは、製造業のクライアントの事例です。導入によってお客様先の課題を解決する、提案型のビジネスを手がけられています。
前提と課題
包括的なWeb集客支援を開始してから、お問い合わせは順調に増えていました。一方で、小規模なお客様からの問い合わせが多く、件数の割に売上が伸びていませんでした。
| 業種 | 製造業 |
| コンバージョン地点 | 資料請求・お問い合わせ |
| 課題 | お問い合わせは増えていたものの、理想とする事業規模よりも小さいお客様からの問い合わせが増えて、売上が伸び悩んでいた |
今回は、この課題に対する、
- 仮説
- 仮説をもとにした施策
- 検証結果
- 結果に対する考察
これらの過程をご紹介します。
課題に対する仮説
お客様と協力して、問い合わせ管理シートを作成し、企業名やお問い合わせの経路、お見積もり金額など問い合わせ内容を見える化していました。

お問い合わせいただいた企業の規模を早期に把握できるようにしています。
現状のWebサイトや広告クリエイティブに魅力を感じる層が、ペルソナとズレていた。
お問い合わせ数は伸びており、サービス自体は市場に受け入れられていることが確認できました。しかし、問い合わせをくださる方々はペルソナ(※)とはズレています。そこで、どのような点がズレを引き起こしている原因なのかを考え直すことにしました。

まず、お客様が狙っていたのは、中規模以上の企業からのお問い合わせです。一般的に、企業規模が大きくなるほど決裁者が増え、意思決定のプロセスが複雑になります。また、費用対効果だけでなく、SDGsや環境負荷など、自社の課題解決以外の要素も決裁時に重視されやすくなります。
実際に、ペルソナに近い企業のホームページを調べてみると、「カーボンニュートラル」「サスティナビリティ」といったキーワードが目につきます。他にも、使われている画像は明るさをやや落としたものが多く、全体的に落ち着いた印象を受けました。
ホームページのデザインや構成には、その企業の好みや価値観がにじみ出やすい。そして、自分たちの好みに近い雰囲気に触れたとき、「この会社とは合いそうだ」と感じやすいものです。

そこで、狙っている企業のホームページの雰囲気を自社のホームページにも取り入れることで、この「合いそう」という感覚を意図的に作り出せるのではないかと考えました。
この観点から、ホームページを見直してみたところ、確かにサービス導入によって、課題が解決できることは訴求できています。しかし、デザインのポップさや費用対効果以外の訴求などが、ペルソナの企業が「合いそう」と感じる水準になっていないことに気づきました。
このことから、Webサイトや広告画像が、ペルソナには響かず、想定と違う層の企業からの問い合わせが増えていたのではないか。このような仮説を立てました。
※自社の商品やサービスを利用する理想の顧客像
仮説に対して行った施策
この仮説をもとに、以下2つの施策を行いました。
施策1:ペルソナを作り直す
支援開始時は、悩みを起点にしたペルソナを作り込んでいました。しかし、ペルソナの売上や施設の大きさ等の、事業規模に関する項目は明確にはしていなかったため、この点を具体的に設定。その他にも、関心事や日頃どんなメディアを見ているのかといったところまで、より細かく具体的にしました。
このとき心がけたのは、できるだけ実態に沿ったペルソナにするために、アルテナだけで作り込まず、お客様とすり合わせながら具体化していくことでした。

「この規模の会社の社長は、〇〇を気にすることが多い」といった、デスクリサーチだけではわからない情報も踏まえて、精度を高めていきました。
施策2:TOPページと広告クリエイティブの改修を行う
作り直したペルソナが求める情報や好む雰囲気に合わせて、TOPページのデザインと訴求内容を改修しました。
TOPページのデザイン面では、全体的な色味を落ち着いたものに変更。フォントも明朝系にして、真面目で誠実な印象が伝わるようにしました。
特にこだわったのがファーストビュー(※)です。ページの内容を見てもらえるかどうかは、Webサイトの第一印象で決まります。具体的には、ペルソナに「ここなら安心して任せられる」と思っていただけるよう、以下の情報を揃えました。
- メインコピーで、何ができる会社なのかを短く言い切る。
- ペルソナが重視する課題解決以外のメリットの訴求。
- 過去の受賞歴やお客様の企業ロゴ、売上規模の大きなお客様の事例を掲載。
そして、TOPページの変更に合わせて、広告の画像も修正。TOPページに合わせた色味やフォントに統一して、自社を知るところから、一貫した印象を持ってもらえるようにしました。
※Webサイトにアクセスした際に、スクロールせずに最初に画面へ表示される部分
施策から得られた結果
ペルソナに近い企業からのお問い合わせ数が増加
ペルソナに設定した、中規模以上のお客様からお問い合わせが増加しました。この規模のお客様からのお問い合わせは、平均して3倍に、多い月では以前の4倍になっています。
この変化に伴って、売上単価も引き上がり、事業全体の売上が大きく伸びました。
広告経由で獲得単価・CVRが改善し、狙った層のお問い合わせも獲得
繁忙期がある事業のため、前年比で比較すると、コンバージョン率(=Webサイト訪問後、何%が問い合わせをしたか)と、獲得単価(=問い合わせを一件獲得するのに何円必要だったか)は、以下のようになりました。
| 施策実行前 | 施策実行後 | |
|---|---|---|
| 獲得単価 | 25,174円 | 16,284円 |
| コンバージョン率 | 0.33% | 0.82% |
さらに、問い合わせ管理シートと突合して、広告からもペルソナにしていた企業からのお問い合わせが入っていることを確認しています。
また、これまでは受注につながる可能性に関わらず、いただいたお問い合わせに営業をかけていました。
それが、全体の問い合わせ数が増えたことで、ご縁のありそうなお客様に、しっかり時間を使えるようになり、営業リソースを有効活用できるようにもなりました。
結果を受けて考えたこと
「どんな問い合わせが欲しいか」も明確にしたペルソナを作る
売上規模、従業員数、上場・未上場などによって、重視されるものが変わります。今回、この点を明確にしたペルソナに修正したことで、狙い通りの問い合わせが増える施策になったのだと思いました。
ペルソナを作成する際には、悩みや役職、年齢層に加えて、「どんな規模の企業か」「どんな内容の問い合わせが欲しいか」まで明確にするという点は、今後もペルソナを作成する時に、意識したいポイントです。
問い合わせの内容がお客様のイメージ通りになっているか確認する
お問い合わせの数だけでなく、内容も追うことの大切さを改めて実感しました。
管理シートを作成し、お問い合わせ内容を確認していたことで、狙っている企業からの問い合わせ数が伸びていないことに早い段階で気づけました。そのおかげで、原因の分析と対策の検討に、大きな遅れなく取りかかれています。
お問い合わせ数が増えると、それで満足してしまいがちです。しかし、お客様が本当に求めているものが、「数」だけとは限りません。
数が増えているあいだは、方向がずれていても気づきにくいものです。そのため、「理想的な問い合わせが増えているか」を随時確認することは、施策が正しい方向に進み続けるためには欠かせないと考えました。
一度作ったペルソナでも、データをみて都度修正する

通常、ペルソナは、施策を始める前の調査段階で作ります。ただ、一度作ったらそれで終わり、というケースが少なくありません。
しかし、最初のペルソナは、あくまで仮説です。施策を実施してデータが集まると、事前の調査では見えていなかったことが出てきます。そこから見えたものをもとに、修正をかけていくと、ペルソナは少しずつ実際のお客様に近づいていきます。
仮説として作ったペルソナを、修正しながら実態に寄せていく。この積み重ねが施策の精度を着実に高めていくのだと思いました。
まとめ
ペルソナをどこまで具体的に描けるかで、施策の中身は変わります。事業規模や決裁の進み方までイメージできれば、ページの色味やフォント、コピーの一言まで、ペルソナに合わせて選べるようになります。
ただし、Web検索やデータだけでは、ペルソナの解像度はなかなか上がりません。今回ペルソナを具体的にできたのは、施策のデータを振り返りながらお客様と問い合わせ内容を確かめ、「この規模の会社の社長は何を気にするか」といった現場の肌感を教えていただけたことが大きかったと思います。
問い合わせは増えているのに、思っていたお客様となかなか出会えない、と感じている方の、少しでも参考になれば幸いです。
注意:以上の事例は私たちの状況に基づくもので、全てのケースに当てはまるわけではありません。