「YouTube広告は、動画のクオリティが重要だ」とよく言われます。しかし、動画を何度も作り直したり、新しい動画を高い頻度で制作することは、コストもかかり簡単ではありませんよね。既存の動画を使って広告の成果が出れば、それに越したことはないでしょう。
動画だけでなく広告文も成果を左右する重要な要素です。広告文が動画とLPをつなぐ導線の役割を担うことで、大きく成果に貢献できる可能性があります。
今回は、既存の動画を使用したまま、広告文の改善により会員登録者数が10倍に増加した工務店クライアントの事例をご紹介します。
注意:以下の事例は私たちの状況に基づくもので、全てのケースに当てはまるわけではありません。
YouTube広告の概要
YouTube広告は、動画プラットフォーム「YouTube」上に配信できる広告で、Google広告の一種として提供されます。豊富なターゲティング機能と多様な広告フォーマットにより、幅広いユーザーへのリーチが可能です。
YouTube広告の種類と広告文の表示場所
YouTube広告には主に以下の種類があります。広告文は、動画の内容に関心を持ったユーザーにクリックを促す重要な要素です。
インストリーム広告
動画の再生前後または再生中に表示される広告です。5秒後にスキップ可能な広告と、スキップ不可の広告があります。広告文は以下の場所に表示されます。

インフィード広告
YouTubeの関連動画や検索結果、ホームフィードなど、ユーザーが動画コンテンツを見つける場所に表示される広告です。インフィード動画広告は、サムネイル画像と広告見出し、説明文で構成されます。広告文は以下の場所に表示されます。

YouTubeショートの広告
YouTubeショート動画の間に表示される縦型の動画広告です。広告文は以下の場所に表示されます。

動画とLPをつなぐ広告文改善でコンバージョン数10倍を実現したYouTube広告の事例
もともとYouTube広告を配信していたクライアントから、思うような成果が出ずご相談をいただきました。今回は、既存の動画はそのまま活用し、広告文を改善したことで大幅な成果向上を実現しました。まずは前提と課題について解説します。
| 業種 | 工務店 |
|---|---|
| コンバージョン地点 | 会員登録・資料請求・展示場来場予約・完成見学会予約 |
| 対象とする施策 | YouTube広告 |
| 課題 | コンバージョン数の向上 |
前提と課題
クライアントは、注文住宅事業を主力とする地域密着型の工務店です。検討期間が長い商材のため、会員登録から完成見学会予約まで複数のコンバージョン地点がありますが、各コンバージョン地点ごとの目標が曖昧のまま広告を配信されていました。そこで、コンバージョン地点ごとに目標値を設定し改善できるよう、以下のようにキャンペーン構成を見直しました。
| 構成変更前 | 構成変更後 | |
|---|---|---|
| キャンペーン構成 | 動画素材ごとにキャンペーンを分割 | コンバージョン地点ごとにキャンペーンを分割 |
| コンバージョン目標 | 目標値が定まっていない | 各地点ごとに目標値を設定 |
| 広告の遷移先LP | 会社トップページ | コンバージョン地点ごとの申し込みページ |
| 広告に使用している動画 | 施工事例のプロモーション動画 | 施工事例のプロモーション動画(変更なし) |
構成変更前は、広告に使用する動画素材ごとにキャンペーンを分割し、LPは会社トップページに設定していました。構成変更後はコンバージョン地点ごとにキャンペーンを分割したため、広告文とLPを各コンバージョン地点に合わせて設定し直しました。新規の動画制作は時間がかかることを考慮し、コンバージョンを誘導する内容ではありませんが、既存の動画をそのまま使用しました。
構成変更前は、トップページからWebサイト内を回遊したユーザーによって、コンバージョンが数件発生していました。しかし、構成変更後はコンバージョンがほとんど発生しなくなってしまいました。
今回は、この課題に対する仮説から施策、検証結果までの過程をご紹介します。
課題に対する仮説
キャンペーン構成を見直し、コンバージョン地点ごとに分割したことで、遷移先LPを会社トップページから各コンバージョン地点のページに変更しました。しかし、動画はコンバージョン地点に合わせて制作されていないため、動画とLPの訴求が一致していませんでした。
仮説:動画とLPの間に生まれる「ギャップ」が、ユーザーの離脱を招いているのでは
動画は、暮らしがイメージできるプロモーション動画で、「雰囲気の良い家」という印象を与えるものでした。それに合わせ、広告文も「××が特徴の○○建設」のような紹介にとどまっていました。

一方、LPはコンバージョン地点ごとの申し込みページに変えたため、「会員登録」や「資料請求」を促す内容です。広告を見たユーザーは家に興味を持ったにも関わらず、いきなり申し込みページに飛ぶことで困惑し、離脱してしまうのではないかと考えました。
仮説に対して行った施策
上記の仮説をもとに、以下の調整を行いました。
動画とLPの間のギャップを埋める「つなぎ役」になるよう広告文を改善する
目的は、動画→広告文→LPという流れの中で、ユーザーの関心が自然に遷移するようにすることです。動画でユーザーが受ける印象を起点に、広告文で次への関心を喚起し、LPで具体的なアクションを促すという流れを意識しました。
今回は、会員登録と資料請求の2つのコンバージョン地点に対するキャンペーンで、広告文の改善を行いました。
会員登録は、「価格入り施工事例がもらえる」という強力なオファーが特徴でした。住宅購入は人生で最も高い買い物であり、ユーザーの価格への関心は非常に高いと考えられます。競合他社も施工事例は多く掲載していますが、価格まで公開しているケースは多くありません。そこで、広告を見ている時点で価格への関心を喚起することがポイントになると考え、以下のように広告文を改善しました。
- 広告文改善前:「××が特徴の○○建設」「××で理想の暮らしを」
- 広告文改善後:「このお家、いくらで建つ?」「価格入り施工事例を公開中」

資料請求は、「間取りのわかる施工事例集がもらえる」というオファーが特徴でした。家を建てる際には、建てたい家のイメージを間取りに落とし込む必要があります。
しかし、ネット上では断片的な写真や動画しか見れず、間取りの参考にしづらいことが多いのではないかと考えました。「間取りのわかる施工事例集」はこのニーズに応えられるため、会員登録と同様、広告を見ている時点で間取りへの関心を喚起できるよう広告文を改善しました。
- 広告文改善前:「××が特徴の○○建設」「××で理想の暮らしを」
- 広告文改善後:「間取り付き施工事例集プレゼント」「素敵なお家の間取りを公開中」

施策から得られた結果
上記の改善をおこなった結果、以下のような成果が得られました。
| キャンペーン構成変更前 | キャンペーン構成変更後 | |
|---|---|---|
| 会員登録 | コンバージョン数:10 | コンバージョン数:101 |
| 資料請求 | コンバージョン数:8 | コンバージョン数:1 |
会員登録は、コンバージョン数が約10倍に改善しました。成果を比較すると、クリック率が0.6%から5%まで改善し、クリック数が大幅に増加しました。また、コンバージョン率も0.03%から0.20%まで改善しています。
一方、資料請求はコンバージョン数の改善が見られませんでした。クリック率は0.6%から1.5%まで改善しているものの、コンバージョンが発生しないことから表示回数が大きく減少しています。こちらは、引き続き改善に取り組んでいます。
得られた結果を基にした考察
あくまで今回の検証における結果です。すべてのケースに当てはまるわけではないですが、当該検証の結果を受けて、以下のように考察しました。
動画とLPの間のユーザー心理をつなぐ広告文設計が効果的
会員登録の成功要因は、動画からLPへのユーザー心理の流れを意識した広告文設計にありました。動画を見てから、広告をクリックしてコンバージョンするまで、ユーザーが抱く感情が自然に流れるよう、導線設計をすることが重要です。広告文を、動画とLPをつなぐ橋渡しとして設計することで、既存の動画を使用した広告でも大幅な改善につながりました。

また、今回は既存の動画を使用したことが功を奏した面もありました。会員登録をアピールする宣伝色の強い動画ではなく、既存のプロモーション動画を使用したため、ユーザーは広告と身構えることなく「この家素敵だな」という自然な感情を抱きます。そこに広告文で「いくらで建つと思う?」と疑問を提示することで、ユーザーの興味関心を引き出し、コンバージョンへつなげることができました。
ユーザーにとって知りたい情報は何かを見極めることが必要
会員登録は大幅に改善しましたが、資料請求は改善が見られませんでした。その理由として、コンバージョン地点のハードルに対し、訴求したオファーがユーザーにとって弱かったことが考えられます。
会員登録は、メールアドレス登録またはLINEの友だち登録のみで完了するため、ユーザーの負担が少なく登録も簡単です。一方、資料請求は名前・住所・検討している建築(新築、建て替えなど)など入力項目が多く、登録に時間がかかります。
そのハードルを越えて資料請求をしていただくには、「間取り」に焦点を当てた訴求ではオファーが弱かったと考えています。「間取り」に関心があるのは、既に情報収集を進めているユーザーですが、広告を見るユーザーには、これから検討を始める層も多く含まれるためです。広告を見るユーザーが実際に気になるポイントを考えて訴求することが重要です。
さいごに
YouTube広告においては動画のクオリティだけでなく、広告文も重要な要素であることが分かる事例となりました。ユーザー心理に基づいて、動画広告の視聴からLP内でのコンバージョンまでの一連の導線を設計することが重要です。YouTube広告を配信している方にとって少しでも参考になれば幸いです。